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「ことの起こりは一四年前……二〇〇四年。ある埠頭に、男の水死体が上がった。小笠原眞人弁護士。海のお父さんや」
晃一は当時の新聞記事を差し出しながら、話を続ける。
「当時刑事課に所属していた社長が、この事故の担当刑事として捜査にあたった。でもその捜査終了と同時に、突然退職。やがて海とともに、探偵社を興し、それからずっとふたりで眞人さんの死の真相について、調べ続けてきたんですよね」
「死の真相って……」
困惑した表情でAが海を見る。
「事故じゃないってこと?」
祐基も驚きを隠せない。
「小笠原弁護士は殺された。違うか?」
「誰に殺されたっていうんだよ!? 」
晃一のショッキングな言葉に、祐基が激高した。
「当時、眞人さんは再開発をめぐって、ある会社の不正を追っていた。その会社は、八神コーポレーション」
晃一は強い視線で海を見ながら言った。
それを聞いた祐基はハッとして、あのパンフレットを思い出す。
「何言ってんの、晃一。父さんは事故で死んだ。その記事にもそう書いてあるだろ」
海は晃一の話にとりあおうとしない。
「海、ほんまのこと言うてや。力になるから。俺は一二年間、ここで働いてきた。社長と海の下で。それなのに、なんで協力させてくれへんねん!」
その言葉を聞き、黙っていた瞳子が口を開きかけたとき、
「言うことなんて何もない。父さんは事故で死んだ……それだけだ」
海は表情を崩すことなく笑顔でそう答え、みんなに仕事に戻るように言う。
海の有無を言わさぬ姿勢に、誰も何も言えなかった。
探偵社を出た海は、品川の埠頭に佇んでいた。
ぐるぐると回るパトカーの赤ランプ。
集まった警察や鑑識。
そして、地面に横たわるビニールシートが被せられた遺体。
海が駆けつけると、ビニールシートがめくられた。
横たわっているのは、変わり果てた父親の姿だった。
立っていることができずに膝から崩れ落ちた海を見つめていたのは、刑事の瞳子だった。
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作者名:MaRU | 作成日時:2018年4月26日 0時