無愛想な。【沖田総悟】 (ページ24)

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無愛想。22 ページ24

土方side

別にこれといって理由はないが夜明け前に目が覚めた。
これまたぱっちり覚めてしまうものだから、風に当たろうと外に出ると先客がいた。

それもまた珍しいもので、いつもギリギリまで寝ているAがそこにはいた。
理由を聞けば奴も目が覚めてしまったらしい。

まぁおそらく俺みたいに何も理由なくってわけではないだろう。

その理由を聞いてはいけない気がして俺はそこで踏みとどまった。

まだ隊士たちも市民も寝ているこの時間は、
本当に静かだった。

「静かだな」

俺がそういうと「そうですね」と。

そこで終わるかなと思ったら、
思いの外Aは話を続けた。

「私、兄さんと離れてここに来るまでずっと1人だったんです。それが当たり前だったから特に何も思わなかったけど。
でも今はバズーカの音とか怒鳴り声とか笑い声とか、とにかく騒がしいのが当たり前で」

確かに江戸の町も、この屯所内もうざいくらいに騒がしい。
俺がそういうとAも肯定して話を続けた。

「でもそれがどこか居心地良くて、こうやって静かな夜1人でいると寂しいなって思ったんです」

「ずっと此処に居たいなって思ったんです」

その言葉にAの方を見るといつもより柔らかく優しい、それでもどこか切なそうな。

そんなこの5年間で初めて見る面をしていた。

その表情を見て、Aにとって此処は大きな存在になっていることを実感する。

過去に何を抱えてきたのかなんざ知らねェが、それはこの小さな背中に抱えるにはあまりに大きく重いものだということは何となくわかる。

それは、Aを近くで見てきた近藤さんも総悟もよくわかっているだろう。

できることなら一緒に抱えてやりてェが、容易には触れてはいけないとこいつの背中から伝わってくる。

だからせめてもの一言だった。

　

「ならずっといればいいじゃねェか」

此処があいつの拠り所になるなら俺たちは何度でもAを受け入れるし、いざとなったら一緒にAの痛みも背負う。

だから、1人だなんて思うなって。

「、、ありがとうございます」

少し暖かみを帯びたその声に、少し安堵しながら夜明けを迎えた。