【番外編】噛めども柔い （ 0214 ） ページ50
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「 …おれのは？」
部活後、いつも通り治と一緒に帰ろうと
部室の外で待っていたけど、なかなか治は出てこなくて。ドアから顔だけを覗かせたと思えば、
「ちょっと中入って」と言われたので、なんだろうと思いながら男子の部室へ。
私と治以外誰もいなくなった部室、
静かな空間にふたりっきり、妙な緊張感を感じていると、発せられたのが先ほどの言葉。
「 なあ、ないの？ 」
『 …え、と 』
主語がなくても、彼がなんの話をしているかは
わかっている。今日はバレンタインデー。
2月14日、現在19時23分。
彼氏は隣のクラスで同じ部活、チョコを渡す機会なんていくらでもあったはずなのに、私は今日未だに彼氏である治にチョコを渡せてない。
「 ずるいなあ、角名や侑にはあげてたやん、なんで？俺だけないの？ 」
『 …や、でもあれは、 』
あれは部員たちのために大量生産した生チョコだ、
「 …俺めっちゃたのしみにしとったんやけど 」
ベンチに腰掛けているため、立っているわたしよりも低い位置にいる治が私の手を握って、下からじっと見つめてくる。ずるい、そんなかおしないで。
「 くれんの？ 」
『 …あげたい、けど 』
「 …けど？ 」
ちらりと治のリュックの横にある、
紙袋の山を見て言葉を飲み込んだ。
なんとなく予想はしていたけど、あんなにも
治にチョコを渡す女の子がいたなんて。
今日私が治にチョコを渡せなかったのは、治がほぼずっと女の子に囲まれてたからで。ああ嫌だ、思い出しただけでもやもやする。
「 …嫌ならあれ、全部侑に食わすけど 」
『 え、や、ちが、っ… 』
「 顔に書いてある、わかりやすくて助かるわ 」
呆れたように笑う治を見て、恥ずかしくなった。
ぜんぶ見透かされてたんだ、恥ずかしい。
『 …とかいっても、本当はあんだけ甘いもんあったらストックしときたいやろ 』
「 んー、まあ、あっても困るもんやないしな。
でもそれよりかは、Aのがいちばん食べたい 」
そんな顔でお願いされたら断れない、
仕方なく、もぞもぞと今日一日中リュックの中にしまっていた彼のために用意したものを取り出した。
そんな私の姿を見ながら、目を細めて笑う
「 ひどいなあ、今日の今まで俺のこと焦らすんやもん、 」
“ 食わせて ”
彼のためにとかわいらしくラッピングした袋から
昨日焼いたガトーショコラを恐る恐る取り出し、彼の口まで運べば、指ごと食われた。
「 …うん、めっちゃ美味い 」
end
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終わり
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うに - すすす素敵すぎてびっくりしました！最後までキュンキュンしながら読みました！ (2021年8月5日 15時) (
レス) id: aca41c32b2 (このIDを非表示/違反報告)
らんたん(プロフ) - こんなにキュンキュンしたのは久しぶりです！本当にありがとうございます。胸が苦しい… (2021年4月19日 11時) (レス) id: 1e7e266fc1 (このIDを非表示/違反報告)
あかね - 終盤泣きました。最高of最高をありがとうございます(真顔)。 (2021年1月16日 16時) (レス) id: f36e099441 (このIDを非表示/違反報告)
黎子(プロフ) - 初コメ失礼します！！終始キュンキュンしっぱなしでした、最高です！宮兄弟が好きな私にとって最高な作品でした！これからも頑張ってください！ (2018年12月18日 0時) (レス) id: 1c7dde52b2 (このIDを非表示/違反報告)
鈕(プロフ) - つくねさん» ありがとうございます〜〜！！そういっていただけてとても嬉しいです；；；； (2018年11月16日 21時) (レス) id: 8b744c9e10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鈕
| 作成日時：2018年2月3日 17時
