影と月 (ページ38)

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当然のごとく、タカシは歌わされていた。

二次会のカラオケ。

ほとんどキャスト陣で

スタッフさんはスタッフさんで行うようだった。

タカシはグループの曲も歌わされ

私も一緒に歌ったり踊ったり

なかなか弾けていた。

「こう見るとAちゃんて本当にダンサーなんだなって思う！」

一番仲の良い子が言う。

今度ライブに来てよ、などと言えば

可愛らしい笑顔で行く！と答える。

「俺も見たいな」

そう言う彼は

主演で、私の好きな人役だった。

「み、皆で一緒に来てよ！」

「そうだね。皆行こうね」

なんとなく、彼の雰囲気が苦手なのは

自分だけの秘密だ。

同い年のはずだけど、どこか余裕があって

目が合うといつも微笑んでくれる。

現に今の時間だって

暗い部屋の中だけど、しょっちゅう目が合う。

私が見てるのかな？

よくわからないけど、

私は遠慮がちに口角を上げた。

そんなタカシは歌い終わるとマイクをテーブルに置き

ドカッと私の隣に座る。

少し驚いて彼を見れば

姿勢を崩しているからか、

私よりも下に目があって

自然と上目遣いで見つめてくる。

「…どうかした？」

「んーん」

今日のタカシも苦手、かもしれない。