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それからの日々は彼女と居残ってレッスンの復習を何度もした。
そんな中でお互いの話をしていき
彼女はずっと年上の人たちと過ごしてきたのを教えてくれた。
「だから、同い年のタカシくんと仲良くできたら楽しそうだなって」
その笑顔は人見知りなんてしない、ただの明るい女の子だった。
「そうなんや。
…そういえば、タカシ、でええよ」
「じゃあ、私も呼び捨てで、ええよ」
「あ、今バカにしたやろ」
「してへん!」
二人で笑い合うと、彼女のケータイが鳴った。
「幼馴染からだ」
ちょっとごめん、とAは背を向けて電話に出る。
「…まだいるよ。…うん、
もうすぐ帰るから大丈夫。…え?」
すると俺の方を振り向いた。
なんやろ?と不思議に思いつつ言葉を聞いていると彼女は言う。
「友達と一緒だよ。」
______“友達”
そうか、俺、友達できたんや。
なんともいえない嬉しさに思わず微笑んでしまう。
目の前の“友達”は通話を終えると
可笑しそうに聞いてきた。
「どうしたの?」
「うん?俺、友達できたんやなあって」
「はは。そうだね。親友になるかもね」
______
______
______「俺、歌おうと思っててん」
なんでも俺の話を聞いてくれるAは
さすがに笑ってしまうだろうか、という不安を抱えた俺の話も
真剣に耳を傾けてくれた。
「タカシすごいじゃん!」
「だからってダンスをやめるわけやないから…
まだ、教えてもらいたいことめっちゃあるし…」
「うん。わかった!
…なんか、別人みたい」
誰のおかげやろな〜。
また微笑んでしまいそうになるのを抑えながら
「タカシやで」と一発かましてやった。
…今の俺がいるのは。
なんて時々考える。
あの時の彼女の強さが、俺を強くさせてるのは
A自身は知らなそうやな。
俺ばっかり話して
電話して、聞いてもらってばかりの立場から
そろそろAの話を聞く立場になるべきでは、
そう思えば
彼女へ会うまでの足取りは軽かった。
『俺でよかったら、』
そう言おう。
______「…っごめん」
あの時の一言が
胸に刺さったままやから。
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作者名:柳 | 作成日時:2017年11月6日 17時