雨のおもいで。 ページ9
「奏くんっ。あったよ！」
「どれ？本当だ！」
スミレは少し高い草地のうえにあった。
「ちょっとたかいよ？とれるかな？」
「平気さっ。よっと」
そう言って少年は上へ登って見事にスミレの花をとってきた。
「ふふん。どーだっ！とれたぞ！」
「奏くん。すごいっ、てっあぶないっ！！」
そこの草地は前日の雨のせいで濡れていた。そのせいで奏は足を滑らせてしまった。
「イッタッ」
「だいじょーぶっ？奏くん。あっ、足から血が出てるよっ。たいへんっ。」
「だいじょうぶだって。花はちゃんとだいじょうぶだし。ッタ」
転げ落ちた衝撃で、少年の足から血が出ていた。その上、足を打ってしまったようだ。
しかし、少年は強がってばっかりである。
「だめっ。そのままじゃ、バイキンがはいっちゃうんだよ。水で洗わなきゃ」
少女は少し強引に少年を水飲み場まで連れていって血をゆすいだ。
「つめたっ。」
「奏くんは男の子でしょ？ガマンだよ。」
あやめは持っていたハンカチをつかって奏の足をふいた。
「ごめん。あやめちゃん」
「いいよっ。でも、困るよね。奏くんのおうちってどこ？」
「この公園のうしろの赤いやねのところ。」
「じゃあ、帰るところまでいっしょにいこ？」
「うん。」
そうして2人は歩いていった。
─────
「おかーさんただいまー。」
「おかえり奏。あらお友達？」
「うんっ。あやめちゃんっていうの。」
「あ、あのっ、奏くんが足をけがしてっ……」
「ええっ。あらまぁ奏、すぐに手当てをしましょうね。あやめちゃんもどうぞ上がって。」
奏の母が、奏の手当てをしている間にあやめは2人でとったスミレの花を握りしめていた。
「あの、これっ。奏くんがけがをしてまでとったお花です！」
「へへ。おかーさん、おめでとう！」
突然のプレゼントに奏の母は驚きつつ、
「ありがとう。嬉しいわ」
そう言って花を受け取った。
・
・
・
「……みたいなことがあったんだよ。」
「雨宮は奏くんか。たしかそのあと、ママがここへ来て」
「また、ここで一緒にご飯を食べてるの。なんだか嬉しいわね。」
そう言って雨宮家はまた私を迎えてくれたのだ。
「ありがとうございます。」
「いいのよ。さ、食べて食べてっ。」
暖かい。
ふいにそう思った。
窓を覗くと、降っていた雨はやんでいて、
夜空の星が思い出をキラリと飾っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Biske | 作成日時：2017年6月24日 15時
