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 控室を少し外れた廊下の隅。自動販売機でココアを買い、椅子に腰かける。
 今頃、花宮さんが暴れているのを抑えている頃だろう。私はそういうのは専門外なので、ただ、静かに待っていた。

「…おい!」

 聞き覚えのある声に話し掛けられて、振り返る。鬱陶しそうな顔をしてしまったのは申し訳ないが、さっき負けた相手だ。仕方ない。そこには誠凜さんが勢揃いで立っていた。私から別に何をしたわけでもないのだけど向けられた視線には敵意が隠されておらず、女性に対してよくもまあそんなに睨みを効かせられるものだと感心する。

「お前、霧崎のマネージャーだよな。」
「まあそうですけど…。えっ、それが何か。」

 私は狂人でもなんでもないから、鬼気迫る表情の彼らは普通に怖いけれど。そういう視線にも態度にも、何度も何度も出会ってきたのだ。―――ここでは、めいいっぱいの微笑みを返そう。

「もしかして女性になら、みたいな甘っちょろい考え方で私に話しかけてきてます?…はは、可哀相な人ですね。」
「そういうわけじゃない、でも誤解させたなら謝るよ。」
「いえ、別に。」

 まだ試合はあるはずなのに、ここだけ妙に静かだった。

「ねえ、木吉鉄平さん。」
「…ああ、なんだ?」
「自分のバスケットボール生活を捨ててまで得られたものって何ですか。」
「ちょっと、奪ったのは貴方の学校でしょ!?」
「まあ、決定打はそうかもしれません。」
「貴方、あいつらのやってることわかってるの?」
「バスケですよね。」
「テメェ!」
「奴らのプレーを見て、貴方は何も思わないんですか。」
「ラフプレーだって言いたいんですか?証拠もないのに?審判はともかく、カメラから観客だって見てる中、誰からも明確な証拠を残されずにプレーできると思ってるんですか。皆さんは今、状況的判断だけで霧崎第一をラフプレーヤーだと決めつけている。…なんて、私には何とも言えないので否定しませんけどね。そういう荒っぽい事も、やったかもしれないです。」

 バスケに不誠実だといわれても、卑怯だといわれても、そもそも『やったのだと確証を取れていない』ものに非難をされたところで反省の仕様が無い。容疑者を既に事件の犯人と決めつけて批難するのとやっていることはまったく同じ。まだ罪の疑いがある、だけなのに。

 遠くから彼らの呼ぶ声が聴こえる。花宮さんの機嫌は予想の遥か早くに治ったようだ。ならば早く終わらせないといけないと、誠凜を真っ直ぐに見据えた。

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えすこ。(プロフ) - 悠。さん» (1年以上返信できずにすみません。)ありがとうございました。勢いで書き上げたような作品でしたが、楽しんで頂けていたら幸いです。 (2021年1月14日 0時) (レス) id: 8ffa707d4f (このIDを非表示/違反報告)
悠。(プロフ) - すごく面白くて1日で全部読んじゃいました。 (2019年10月15日 19時) (レス) id: 3af2e99db8 (このIDを非表示/違反報告)
えすこ。(プロフ) - さっこさん» 有難うございます。自分のやりたいように書いてきたので、楽しんで頂けたのなら幸いです! (2019年3月30日 10時) (レス) id: f79f31091d (このIDを非表示/違反報告)
さっこ(プロフ) - お疲れさまでした!主ちゃんがどんな台詞を返すのか...毎度ドキドキハラハラ、楽しませていただきました! (2019年3月29日 12時) (レス) id: 7b42043074 (このIDを非表示/違反報告)
えすこ。(プロフ) - 白浪美鎖@更新遅さん» カッコいいと思って頂けたのなら幸いです。無事完結まで漕ぎ着けられたのも白浪美鎖さんの応援あってこそです。お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2019年3月22日 0時) (レス) id: f79f31091d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えすこ。 | 作成日時:2016年12月31日 22時

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