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明らかに酷いケガをしている向こう側と、審判から何も言われていないのだから無罪だと笑うこちら側。果たして、嘘か真か。
「……なるほど。」
ぽつり、呟いた声が罵倒の間を縫って良く響いた。霧崎第一の面々が皆此方に注視するのを感じながら、わたしは花宮さんを真っ直ぐに射貫く。
「ふはっ、どうした真嶋。何か分かったか?」
「はい。」
彼らは確かに、何もしていなかったのだ。だって反則を知らせる笛は鳴らないし、多少口は悪いがそれを言ったら向こうも同じこと。加えて審判を提供したのは向こうのチームなのだから、笛が鳴っていないことが身内びいきである可能性は低いだろう。
全ての悪事は
そもそも悪事何て、していないけれど。
「花宮さんの言う通りでしたね。すみません、さっきのは失言でした。」
これは、『噂はどこからでも湧く』『見ていないものを憶測しても仕方ない』そう思いながら疑いを掛けたわたしの失敗だ。素直に頭を下げれば、花宮さんは愉快そうに笑い、瀬戸さんが意味深長に「ふうん」と呟き、原さんと山崎さんと松本さんが「えっマジ!?」と驚いて、古橋さんが「そうか」と声を上げた。
「合格、だな。」
「え?」
「合格だ、真嶋。俺たちバスケ部は御前の入部を歓迎するぜ?」
「えっ、合格なんですか!?何もしてないのに。」
「まあこっちにも色々あるんだよ。」
「花宮がこうもすぐに合格出すって珍しいよな。」
「それな。ま、納得はしてっけど。」
「となれば、後は真嶋が入部するか決めるだけか。」
「俺ら強制はしないから、好きに決めちゃっていいよ。どうせ他言しないだろうしさ。」
突然の合格判定に戸惑いを隠せず霧崎第一の皆さんを眺めている中、短い審判の笛が鳴った。どうもあれだけ荒れている敵陣だが、試合は続行の意志があるらしい。報せに「マジ?まだやんの?ウケる。」とガムを膨らませた原さんを山崎さんが注意したところで、コートへと向かう5人。瀬戸さんはベンチでまた睡眠を貪ろうとアイマスクを顔に装着し、酷く険悪な雰囲気のまま練習試合は再開した。
「この試合を見ながら、入部するか考えて。」
夢の世界へ旅立つ直前、瀬戸さんに告げられた言葉だ。
わたしはバスケ部に入るのだろうか。やや歪んだ熱気に中てられ試合に釘付けになりながら、ふと湧いて出た疑問。
「なにこれ、えげつな…。」
既に、答えは出ているような気がした。
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えすこ。(プロフ) - 悠。さん» (1年以上返信できずにすみません。)ありがとうございました。勢いで書き上げたような作品でしたが、楽しんで頂けていたら幸いです。 (2021年1月14日 0時) (レス) id: 8ffa707d4f (このIDを非表示/違反報告)
悠。(プロフ) - すごく面白くて1日で全部読んじゃいました。 (2019年10月15日 19時) (レス) id: 3af2e99db8 (このIDを非表示/違反報告)
えすこ。(プロフ) - さっこさん» 有難うございます。自分のやりたいように書いてきたので、楽しんで頂けたのなら幸いです! (2019年3月30日 10時) (レス) id: f79f31091d (このIDを非表示/違反報告)
さっこ(プロフ) - お疲れさまでした!主ちゃんがどんな台詞を返すのか...毎度ドキドキハラハラ、楽しませていただきました! (2019年3月29日 12時) (レス) id: 7b42043074 (このIDを非表示/違反報告)
えすこ。(プロフ) - 白浪美鎖@更新遅さん» カッコいいと思って頂けたのなら幸いです。無事完結まで漕ぎ着けられたのも白浪美鎖さんの応援あってこそです。お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2019年3月22日 0時) (レス) id: f79f31091d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えすこ。 | 作成日時:2016年12月31日 22時