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 ピッと短い笛の音が鳴ると同時、バスケットボールが天井高く放り投げられた。両者が競い合うようにボール目指して手を伸ばし、素早く敵陣へと切り込むように駆けていく。積み重ねてきたものを体現する如く無駄の省かれた動きは、目も離せないほど美しくて。思わず自分の口から熱い溜息がこぼれるのを他人事ながらに感じ取った。たかが練習試合とはいえ、送られる声援は少なくない。一進一退の攻防戦は次第に体育館の中へ熱気をもたらし、気付けばわたしも声を出して応援していたのだが。

 異変が起きたのは、開始から三分後の話である。

 ボールを持って攻めていたのは霧崎第一だった。警戒する敵を(かわ)してゴール下まで切り込み、涼しい顔でシュートを行ったと思えた次の瞬間。

「キャプテン!?」

 不意に、相手チームの選手が倒れた。
 慌てて試合を中断させる笛が鳴り響き、それを合図にしてチームメイトが駆け寄っていく。

「大丈夫か?」「立てますかキャプテン?」「タイム、タイムで!」

 ケガをしたのはキャプテンのようだ。遠目ながらにも顔面は赤い血で痛々しく、どうにも鼻に強い衝撃を与えられたことが把握できた。
 一体何があったというのか。試合の行く末を見守るわたしの耳に、(とげ)のある声が届く。

「お前ら、ほんっと最低だな!」
「だから嫌だったんだ、こいつらとやるなんて!」
「何してくれてんだ、うちのキャプテンに!」
屑野郎(くずやろう)!」
「卑怯者!」

 それは、明らかに我々(というより試合に出てたスタメン)に向けられた罵倒だ。最低、屑、卑怯、ゴミ……。ありとあらゆる、思い付く限りの暴言を与えられ、憎悪の目を向けられる。正直聞いていて気持ちの良いものではないが、しかし。彼らの反応は偶然の事故として受け止めるには過激すぎるように感じた。
 そう。まるで、霧崎第一が事故を故意に起こした、ような。

 一時休戦、自陣のベンチへと帰ってきた彼らを振り返る。
 まさか、まさか。彼らは。

「…らふ、ぷれー?」

 あんまりにも喉が掠れて囁くほどの声になってしまったが、きっと聞こえたのだろう。
 こんな時ですら冷ややかな顔をした古橋さんが静かに此方を向いた。

「何かあったように見えたか?」
「い、え、なんにも。」
「大丈夫大丈夫、ほら!笛鳴ってないっしょ?俺らなーんにもしてないよん。」
「ま、うちと試合するとちょっとけが人多いっつーか、それで過敏になってんじゃね?」

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えすこ。(プロフ) - 悠。さん» (1年以上返信できずにすみません。)ありがとうございました。勢いで書き上げたような作品でしたが、楽しんで頂けていたら幸いです。 (2021年1月14日 0時) (レス) id: 8ffa707d4f (このIDを非表示/違反報告)
悠。(プロフ) - すごく面白くて1日で全部読んじゃいました。 (2019年10月15日 19時) (レス) id: 3af2e99db8 (このIDを非表示/違反報告)
えすこ。(プロフ) - さっこさん» 有難うございます。自分のやりたいように書いてきたので、楽しんで頂けたのなら幸いです! (2019年3月30日 10時) (レス) id: f79f31091d (このIDを非表示/違反報告)
さっこ(プロフ) - お疲れさまでした!主ちゃんがどんな台詞を返すのか...毎度ドキドキハラハラ、楽しませていただきました! (2019年3月29日 12時) (レス) id: 7b42043074 (このIDを非表示/違反報告)
えすこ。(プロフ) - 白浪美鎖@更新遅さん» カッコいいと思って頂けたのなら幸いです。無事完結まで漕ぎ着けられたのも白浪美鎖さんの応援あってこそです。お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2019年3月22日 0時) (レス) id: f79f31091d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えすこ。 | 作成日時:2016年12月31日 22時

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