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「……ん?」

 花宮さんの声掛けが即ち脅迫だと気付いて絶望してしまった放課後。(心の中で)泣いていたわたしは、部活へと重たい足を向けた。
 有難い配慮で着替え場所は男子とは別場所にあるのだが、そこで着替えている最中。時間が経ち冷静になった頭。先ほどの話を思い返し、ようやく違和感に気付いたのだ。

 先輩はともかく、監督が…退部?それはつまり、監督業を辞めされられた、ということ。それは教える立場の人間が1人失われることに他ならないし、顧問は飾りらしいから、メリットなんて無いはずだ。じゃあ、一体監督は誰が。

「ああ、それなら花宮がやってるよ。」

 フリーズ。疑問のあまり顔を合わせたホクロさ…瀬戸さんの答えは、思考回路を全部凍らせるに値する返事だった。
 ……え?今なんて、花宮さんが?いやいやいや、まさか。聞き間違いだろう、だって花宮さんって部長もしてて、じゃあそんなわけ……

「あるよ。うちのバスケ部の主将は花宮で、監督も花宮。主将兼監督なんてウチ位のもんだろうけど。」

 冷静に挟まれる声が次第にわたしの脳内にも届く。最早聞き間違いを疑う余地はない。

「花宮さん、主将で監督……!?」

 部長さえやったことのないわたしでも、運動部経験者として予想はつく。主将というだけで責任からチームメイトのまとめまで先頭に立たねばならないというのに、彼は練習メニューや戦術まで全て担当しているということ。
 いくら有能だからって開いた口が塞がらない。呆れではなく、驚きのあまりに。当の本人はきょとん、と首を傾げていたが。

「そんなに驚くことじゃねえだろ。」
「いやいやいや…あの、えっ本当に言ってます?」
「あ?嘘だと思ってんのか?」
「ええっ、そうじゃなくて!」

 なんだ、なんでこの人は本気で不思議そうなんだ。これがどんなにすごいことなのか分からないとでも?前代未聞だろうに。
 心中を察したのかわたしの肩に手を置いたのは原さん。苦笑いを浮かべて(いるような雰囲気を醸し出して)彼は溜息を吐いた。後方の皆さんもどこか遠い目をしているような、そんな空気。

「真嶋ちゃん、残念なことに花宮はマジで言ってるよ。」
「ああ、純度120%の本気で言っている。」
「正直天才じゃないの?分かんないの?って言いたくなることはあるよね。」
「大丈夫。分かるぜ、俺たちには。」
「原さん、死魚さん、瀬戸さん、山崎さん…!」

 そして、今日ここに「まってまって!真嶋ちゃん!」

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えすこ。(プロフ) - 悠。さん» (1年以上返信できずにすみません。)ありがとうございました。勢いで書き上げたような作品でしたが、楽しんで頂けていたら幸いです。 (2021年1月14日 0時) (レス) id: 8ffa707d4f (このIDを非表示/違反報告)
悠。(プロフ) - すごく面白くて1日で全部読んじゃいました。 (2019年10月15日 19時) (レス) id: 3af2e99db8 (このIDを非表示/違反報告)
えすこ。(プロフ) - さっこさん» 有難うございます。自分のやりたいように書いてきたので、楽しんで頂けたのなら幸いです! (2019年3月30日 10時) (レス) id: f79f31091d (このIDを非表示/違反報告)
さっこ(プロフ) - お疲れさまでした!主ちゃんがどんな台詞を返すのか...毎度ドキドキハラハラ、楽しませていただきました! (2019年3月29日 12時) (レス) id: 7b42043074 (このIDを非表示/違反報告)
えすこ。(プロフ) - 白浪美鎖@更新遅さん» カッコいいと思って頂けたのなら幸いです。無事完結まで漕ぎ着けられたのも白浪美鎖さんの応援あってこそです。お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2019年3月22日 0時) (レス) id: f79f31091d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えすこ。 | 作成日時:2016年12月31日 22時

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