5. 1年前の夕陽 ページ5
「はぁぁ...」
あの後、お互い何も話さないまま家に着き、自室へ直行。
制服のままベットへダイブし大きい溜息をつく。
その原因はただ1つしかない
本当反則だろあんな顔...
和のあの夕陽に照らされた横顔はあの頃と変わってなくて。
変わった事といえば...あの頃より和が大人っぽくなった事、か
「...もう1年、か」
枕に顔を埋めたままボソッ、と呟く
そう。俺が和の甘い罠にはまって1年。
いや...実はそれよりももっと前から落ちていたのかもしれない。
ずっと、隣にいたんだ。
生まれた時からお隣さんで、気付いたらずっと隣にいた和。このまま、ずっと一緒にいるんだ、と疑わなかった。
そして去年、高校生になってすぐの事。
和と女の子がキスしてる場面を、偶然見てしまったんだ。
すると身体が勝手に動いた。
見ちゃいけない、見たくない。
そう思いながら下駄箱まで走った。
あんな幼馴染を見て、俺は酷く焦った。
和がモテるのは昔からだ。よくわかってる。
でも。和がキス、してる所なんか見たら
心に釘でも刺さった様な感覚に陥ったのだ。
ずっと一緒にいるんだ、と思ってたのは俺だけで、和は違うんじゃないか。和は他の人を隣に置くんじゃないか、と。
そしてそれと同時に
和の隣は俺の居場所であって欲しい。
誰にも譲りたくねぇ、と。
そんな事を考えてたら、和が下駄箱まで来て
「うわっ、A?どうした?先に帰ったんじゃなかったの?｣
俺を見るなり、驚いた様子で話しかけてくる和。
あぁ...あんな後に会うなんて気まずいに決まってる。
出来たら、今日はもう会いたくなかった。
断ろうか、と思い口を開けようとしたら
「A、帰ろっか｣
優しい眼差しで見つめ話しかけてきた和。
その時、夕陽がゆっくり落ちていき、ふっ、と緩く微笑んだ和を綺麗に照らしていく。
その顔があまりに甘くて切なくて。
この時に今までの自分の気持ちに気づいたんだ。
あぁ、この人が好きだ、と。
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作者名：和希 | 作成日時：2018年6月25日 1時
