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自分が目覚めて一週間程で、動けるほどに怪我が治った。約束通りにAのいる病院に連れていってもらった
「A・・・」
Aは一週間が経っても目が覚めていなかった。脚を無くし、呼吸器がつけられて横たわる姿は痛々しい。安楽死を勧められる理由も分かる
僕にも説明がされた。これまで通りの日常は送れないだろうと
「・・・大丈夫だよ。僕がずっと傍にいるから」
Aの眠るベッドの傍に行き、体を優しく撫でてやる
「ア、ゥ・・・」
「A?」
小さく聞こえた声。一度も目を覚まさなかったAが、目を覚ましていた。薄く開いた目が僕を捉えて、返事をしてくれた
「愛の力は偉大だな」
「うるさいです。・・・でも、本当に良かった」
赤井に言いはしたものの、そうであってほしかった。僕が来ただけで、彼が目覚めた事が何よりも嬉しかった
「A、無理するなよ。僕は君を見捨てない。君がそうしてくれたように」
「・・・ゥウ・・・」
か細く聞こえた返事。薄く開かれた目が閉じられて、ゆっくりとした呼吸が手の平に伝わって来る
「改めて思うが、綺麗な犬だな」
「ええ。綺麗な蒼色で、しかも強いんです。彼は凄いですよ」
「それほど?」
「勿論。僕が力で負けてるんです。相当ですよ」
そう言うと、赤井は心底驚いていた
「そう言えば、ハロくんはどうする?」
「一度会ってみて、僕の事を何かしら想ってくれているのなら、また一緒に暮らしたいですね」
「分かった」
赤井との会話も程々に、これからの事を考えていた。Aには自慢の脚が一本欠損し、一人では生きにくい体となってしまった
僕がいなくとも強く生きるだろうけど
拾ってもらった命だ。Aの為に尽くそう。僕の居場所もない事だし
僕が行方不明として扱われていた時、捜索は秘密裏に行われていた。生きていた場合、遺体として見つける為に。それが分かって、赤井は日本の警察には告げず、僕もAもFBIが保護してくれていた
Aもそれが分かっていて、近くに来た人物の分別をつけていたらしい。風見や僕で、日本警察の臭いを覚えていたから
「バウッ」
「はははっ、元気になったなー」
目覚めてからというもの、目まぐるしい程の回復力を見せた彼は、食欲も回復し、すっかり元気を取り戻していた
暇潰しに買ったオモチャには、見向きもしてくれないけれど
「そろそろ退院出来ますよ」
「本当ですか?」
「はい。ここまで生命力の強い子は初めてです。安楽死を勧めていた自分が獣医として恥ずかしいほどに」
獣医は笑って言った
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作者名:空白可能 | 作成日時:2022年10月11日 23時