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僕は部屋の隅にいる男に視線を向けた


「で、僕はどうして助かったんですか?教えてくれませんか?赤井 秀一」


部屋の隅にいたのは、赤井 秀一だった。そもそも、僕が目覚めた時に声を掛けて来たのも赤井 秀一だった


「蒼い犬、そう言えば伝わるか?」
「蒼い犬って、まさか・・・」
「君の飼っていた犬が、君の遺体を探していた俺を導いてくれた」
「僕の遺体って、」


赤井は僕が見つかるまでの話をした

僕が建物から撤退して来た中にいなかった事を公安に指摘したが、それは気のせいだと突っぱねられた。だが、赤井も優秀だ。気のせいで済ませられるはずもなく、公安への強い追究をした

流石に無視する事が出来ず、上部だけの捜索を日本の警察はして、僕は行方不明として処理された

それに納得がいかなかった赤井は単独で、僕の事を探しに建物に足を運んだ


「そして、二日前に蒼い犬と遭遇して、瓦礫に埋まる君を見つけた」
「二日も眠っていたんですね、僕は」
「そうなるな。十日間もよく生きていたものだ」


十日間、僕はAのお陰で生き延びていた。きっと最後に見たAの姿は、赤井を見つけた時のものだろう


「蒼い犬は、どうなりましたか?」
「・・・状態は思わしくない。今も動物病院で眠っている。意識は一度も戻っていない」
「は、」


彼は強い子だ。だから、もう既に元気になって、僕を待ってくれていると思っていた。それは僕の思い過ごしで、勘違いだった


「安楽死、という話も出ている」
「それほど、彼の状態は良くないのですか?」
「ああ。君を見つけた後、犬は倒れた。医者が言うには、脱水症状と餓えが極限に達していたが、それに耐えていた。そして、右足の怪我があって、そこは壊死しかけていたそうだ」


壊死しかけていた脚は、腐る前に切断されたという。脚を切断する前に安楽死の話が出ていたけれど、赤井が生き残れる方法を最優先として、その決断をした


「君の怪我はほぼ完治する事が出来る。傷痕は残るが、これまで通り、動かす事が出来るそうだ」
「僕は、」
「動けるようになったら、連れていってやろう。君の友人の所に」
「・・・お願いします」


ほぼ治ると言っても、今はまだ動けない。無理に動いて、Aのくれた命を捨てるつもりはなかった。Aが飲まず食わずで繋げてくれた命を無駄遣いしたくなかった

それを見越してか、赤井はアイツ、ヒロの話題を出した。そこで、その時の真実を知った。流石に堪えたが、Aの事もある手前、命を捨てる考えは出なかった

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作者名:空白可能 | 作成日時:2022年10月11日 23時

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