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「三日後に異常がなければ、退院は可能ですよ」
「分かりました」
三日という峠も越えて、Aは僕の住む場所に戻って来た。家は流石に変わったけれど、Aとハロの為に買ったものは持って来ていた
そして、ハロも帰って来ていた
「おかえり、A」
「フンッ」
当たり前だ、と言わんばかりに鼻を鳴らされた
「可愛いなぁ、君は」
「バウ?」
Aを抱き締めると首を傾げられる。馴染みのない言葉だっただろうか?格好良いの方が似合うとは思うけれど
「好きだよ」
「バウバウ!!」
好きは分かるらしい
「アンアン!!」
「ハロも好きだぞー」
近付いて来たハロも一緒に抱き締めて、久し振りに揃ったので遊びまくった。僕に仕事なんてないのだから、いくらでも遊ぶ事が出来る
これから、ずっと偽名で生きて仕事をして、Aとハロと暮らして行くものだと思った
「という訳で、捜査協力をしてくれないか?」
「はい?何で僕が、」
「君はワーカうんたらになりそうだったから、どうかなと思ったんだが」
「ワーカホリックです。まぁ確かに、それはありますけど・・・」
仕事中毒にはなっていた思う。今も、なんだかやりきれない気持ちもあった。それを察した赤井からの申し出だった
助けられている手前、断りづらい事でもあるけれど
「ワフッ」
「ん?」
隣で声が聞こえて、そちらを見る。Aが隣にいた。本当に彼は強い。三本の足でも、歩けるほどになっているのだから
「どうした?」
少し身を屈めて訊く。すると、Aに足を鼻で小突かれた
「もしかして、行ってこいって?」
「バウッ」
「・・・ありがとう。Aの了承も得たので、僕に手伝える事があるなら、手伝わせてもらいますよ」
「助かる」
Aの後押しもあって、僕は遠回しに仕事復帰を果たした
何気なく過ぎ去って行くゆっくりとした時間。目まぐるしく色移りしていた日常も、今では一つ一つの色を確認するほどに余裕が出来ていた
「そう言えば、君は一体どこから来たんだ?」
何気ない日常の中で、ふとした疑問をAに投げ掛けた
出会った頃から、僕を異常なほどに気に掛けて、救ってくれた。そこまでするのも、違和感があった
「ま、訊いても分からないか」
犬語が分からないといけないので、いくら訊いても無理だろうと思っていた
だけど、今回は違った
「A?」
Aはどこかに歩いて行き、何かをくわえていて、それを僕に渡した。受け取ったそれを見てみるとサングラスだった
サングラスで思い出されるのは、アイツだった
―
終 わ り
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作者名:空白可能 | 作成日時:2022年10月11日 23時