Day06 ページ6
「……ひか、る、」
震えた、少し掠れた声で、あの時と変わらぬままの姿で、深澤は目線を合わすようにしゃがんだ岩本の手をぎゅ、と掴む。
「ひかる、本当に、照？」
「じゃなかったら誰になるんだよ…」
「…俺の事、怒らないの」
「何でふっかを怒んなきゃいけないの」
「ずっと、代わりに縋ってたから」
「代わり？」
疑問符で返したものの、見当はつく。
きっとあの「舞台」の空白――自分じゃない自分があの場に立っていたのだろう。
「彼」がどんな経験をしてきたか、なんて、切り取って面白いところを上演しただけの「舞台」じゃわかるはずもない。
それでも、無闇に聞くような真似はしたくなかった。
「…みんなは、」
「ラウールがこっちに来た。…それで、全員。だから、きっとそろそろなんだとは思ってたけど」
「ラウが？」
「…あいつ、泣いてたよ。お前を助ける為に情報集めに行って、帰ってきたらお前が居なくなってて、ずっと探していたけど見つからなかった、って」
「……泣いてた、の？」
「ずっと、康二と目黒が慰めていた」
深澤の視線が下へと落ちる。また自分の所為なんて宣うのだろうか。
「…ふっか。ごめんな」
「へ、」
「お前の傍に着いてやれなくて」
「…本当だよ」
「それでも、あの時は。…あれが、最善だった、って、思ってたんだ」
「本当、照は馬鹿だよ。死なない俺なんか守って、1番最初に死んじゃって。馬鹿。……本当、大馬鹿者だよ」
言葉とは反対に冷たい深澤の手が、同じく冷たい自分の手を握る力を強める。
「…ふっか、行こう」
「どこに？」
「俺だって、ここがどこかわかんねぇけど…ずっとここにいたら、あいつらが心配しちまう」
深澤の手を引っ張って、来た道を戻る。
「舞台」はもう見えなくなっていた。深澤は、ぽつりぽつりと、岩本に話をする。
それは最後の、阿部と佐久間が主役だったあの「舞台」で話していた事と類似していた。
普通だったら死んでいるであろう爆発に巻き込まれたりだの海に沈んだりだの、そんな経験に遭うといつも知らないところにいて、メンバーと同じ顔と名前と声のした人物と出会うのだと。
何となく、自分の中で話が結び付くような感覚を覚える。
やっぱり、これは深澤の、それっぽく言うならきっとこうだ。
「――これはある「怪物」の人生劇場である」
本来ならば1つしかないその舞台を、死ねないが故に何度も経験した、
そんな、憐れな「呪われた者」の、オムニバスドラマだったのだろう。
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ゆづ - やばいです…。思い出してこれだけでも泣きました (2020年8月28日 22時) (
レス) id: deb2d46d42 (このIDを非表示/違反報告)
湊都(プロフ) - そら。さん» ご指摘ありがとうございます！ (2020年8月26日 7時) (レス) id: 9124562c1c (このIDを非表示/違反報告)
そら。 - Day 5のところなんですが、和風の世界の主役は『目黒と向井』ではないのでしょうか…？間違っていたら申し訳ありません (2020年8月26日 6時) (レス) id: c6c4969a03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湊都 | 作成日時：2020年8月22日 14時
