Day07 ページ7
よくあるフィクションの様に、深澤を見つけたら崩れるかと思った白い世界は残念ながら崩れてくれない。
ただ永遠と続くスノーホワイトを、2人で歩いていた。
「ねぇふっか」
「何」
「俺、ふっかは色んな「舞台」に立ってきたんだって、思うよ」
「…舞台？」
先程見たあの「舞台」たちの事を話すと、深澤は困ったような笑みを見せる。
「だとしたら、とんでもない舞台だ」
「でも本当に、お前が今までその、色んな世界で生きて来たんだって、そう思わされた」
「でもさ、ふっか」
岩本は、その少し小さい深澤の顔を覗き込むように問いかける。
「どんな舞台に立っても、ふっかは「S隊総監督」の「深澤辰哉」だよ。役者なんかじゃない」
そもそも、深澤は諜報担当でもない。演技とは少し縁遠い人間だというのに。
「だからさ、全部演り切ったふっかは、すげぇなって、もっと称賛されるべき人間だって、思うよ」
まるで千秋楽を迎えた役者の様だ。
「…あいつら、褒めてくれるかな」
「当たりめぇだろ。…康二辺りは嫉妬するかもしれねぇな」
「はは、「舞台は俺の専門やったのに！」って？」
「ありえるだろ？」
「…結局、寂しがりの2人が1番最初にいなくなっちゃったんだもんね」
「え」
「照と康二。寂しがりさんの2人」
ぽつり、と呟かれたその言葉に驚いた。
「……何で知ってんだ？」
「え？」
自分はともかく、何故誰がどのタイミングでいなくなったなんて事を。
「照が教えてくれたんだよ」
「俺が？」
「夢の中で。代償で眠れない時に、たまに見た夢だったんだけど」
照、知らないんだ。なんて寂し気に吐いた彼にどう返していいかわからなくなる。
「…今日は、騒がしくなりそうだな」
やっと吐き出す事の出来た台詞は妙に間の抜けたものになってしまった。
「…そうだね」
皆の話も聞きたいな、と零した深澤の言葉と、岩本が立ち止まったのはほとんど同時だった。
飛び降りれるくらいの高さの段差。
それだけで何かわかってしまうなんて、自分もこの世界に毒されているみたいだ。
「どこまでも「舞台」なんだな」
「本当だね」
どうするか、なんて決まっていた。
どちらが言わずとも、2人でその段差を飛び降りるように、軽く飛ぶ。
「ふっか」
「ん？」
「お疲れ様」
たったそれだけの言葉なのに、何だかその言葉でふっと胸が軽くなった気がした。
「…うん」
たったそれだけの言葉を、きっと自分はずっと待っていたのだ。
【暗転】
終
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 965人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆづ - やばいです…。思い出してこれだけでも泣きました (2020年8月28日 22時) (
レス) id: deb2d46d42 (このIDを非表示/違反報告)
湊都(プロフ) - そら。さん» ご指摘ありがとうございます！ (2020年8月26日 7時) (レス) id: 9124562c1c (このIDを非表示/違反報告)
そら。 - Day 5のところなんですが、和風の世界の主役は『目黒と向井』ではないのでしょうか…？間違っていたら申し訳ありません (2020年8月26日 6時) (レス) id: c6c4969a03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：湊都 | 作成日時：2020年8月22日 14時
