第11話 小湊春市2 ページ14
野球は、人を傷つける。
そう言われて、生きてきた。
それが、絶対でないことも知っていた。
それが、野球に限った話でないことも知っていた。
それでも私が、野球を知りたいと思ったのは何故なのだろうか。
「時屋！聞いているのか！」
「…え、あ…すみません。何ですか？」
「いや、いい。代わりにこの問題解いてみろ」
授業中、ほとんど話を聞いていなかった。
そういえば、数学って４時間目だったような。
今の授業は数学�機�
私の手元には、１時間目の教科である国語が置いてある。
マジか。
先生が、チョークを渡してきたのでとりあえず受け取る。
数学�気蓮△△泙蠧整佞任呂覆ぁ�
一応、春乃と勉強会をしておいて良かった。
てかこれ中学のときの振り返りじゃん。
できない奴いるのかよ。
授業が終わると、何の気配もなく肩を引っ張られた。
それが春市君の手だと分かると、少なからず持ってしまった警戒心を解く。
「どうしたの？今日、ちょっとおかしいよ」
「別に…どうもしてない」
「嘘、分かるよ。それぐらい」
まるで子供をあやすように言われて、余計に気が抜けてしまった。
私たちの距離が通常より近いからか、クラスメイトからの視線が痛い。
春市君の髪の毛から覗く真っ直ぐな瞳から目をそらすと、私は黙ることしかできなかった。
「何か言ってくれないと、分からないよ」
若干、言い方がキツくなる春市君に、身を縮めることしかできない。
だから、彼は格好いいと私は言った。
どんなに可愛い顔をしていても、こういうときはちゃんと男の子なのだ。
そして、こういうときはちゃんと女の子である私は、何も言えない。
「まだ、よく分かんない…」
「…どうして？」
「春市君の言う『おかしい』が、どうしてなのか…よく分かんない」
「そっか…」
なんというか、誰かにここまで自分の弱さを見せたことがなかった。
だから、どうしたいのかもよく分からなかった。
どこかの探偵小説のような語彙力があれば、この気持ちも誰かが解き明かしてくれるだろうか。
珍しく非現実的なことを考えていた。
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←第10話 時屋蒼羽
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
琥珀ねっと。 - あーちゃんさん» ありがとうございます！更新が遅いですが、気長にお付き合いいただけると嬉しいです。応援ありがとうございます。 (2019年4月13日 21時) (
レス) id: a1b104d49d (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん - すごく面白いです！展開が楽しみ！！これからも頑張ってください！(*^^*) (2019年4月13日 13時) (レス) id: 8c4679311b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：琥珀ねっと。 | 作成日時：2019年4月5日 5時
