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【ノルソル過去編】善良な悪人達の話 ページ22

落ち着け。落ち着け、落ち着け。
ノルカは灯りに向かいながら、心の中でそう言い続けた。

その灯りに見えるのは、憎き仇オキナの姿。
オキナは黙ってこちらを見据えていた。
本当なら、今すぐ地を蹴ってこの手で殴り殺してやりたい。
しかし、今の自分がオキナに勝てるはずもない事は重々承知している。

こいつらは、きっと……。
俺達を追ってきたに違いない。
それ以外に理由が見当たらない。

ノルカの額にジトリと汗が滲む。

あくまで今は、自分達に手を差し伸べてくれた妖兎族の皆を巻き込まないよう時間を稼ぐ事だ。
自分達を追ってきたとなれば、妖兎の皆が自分達匿った事で罪に問われるのは必至。

ノルカの体を震わすのは、緊張と殺意。そして恐怖だった。
ドクドクと大きく心臓が脈を打つ。

「……よぉ。久しぶりだな。クズ野郎」

震えているであろう声を必死で隠し、牽制するかのような声音でノルカは低く呟いた。
オキナの口角が上がるのが見える。

「おやぁ?これまた久しい顔だな。まさかこんな所で会うとは夢に思わなんだ…。随分と心配していたのだぞ?……ノルカ」

「へっ…。白々しいぜ?思ってもねぇ事は口に出すもんじゃねぇっしょ」

「……ククッ……ガッハッハッ!!見ない間に随分と達者になったな!!……てっきり父の後を追って自害でもしたのかと思っていたが…。まさか月都領域を抜けているとはな!」

「悪いが俺達はそんなヤワじゃ無いもんでね。俺達が死んじまったら、誰が親父の無罪を主張すんだよ」

「ほぅ。まだそんな戯言を吐かしているとは…。まぁいい、再会を祝して少し話でも聞かせてもらおうか」

オキナはバカにするように鼻で笑った後で、懐から煙管を取り出し部下に火を灯すよう促す。
それを見ていた一人の部下が声を上げた。

「た、隊長!恐れながら申し上げます!任務は夜明けまでにとのこと!!……ここで餓鬼相手に」

「焦るな。相手は家畜以下だ…。簡単なものよ。何より……」

部下の発言をクツクツと一通り笑い飛ばしたオキナは、煙を吐き出してノルカに視線を向ける。


「ワシは今。"ノルカの話"を聞きたいのだ」

オキナの瞳が弧を描いた。
ノルカはその目に捕らえられ、全身にゾクリと悪寒が走る。
自分より遥かに強いその存在による威圧感。
巨大なバケモノが目の前に立ちはだかっているかのような感覚の中。
ノルカは必死で冷静を保った。

「……話?てめぇなんざに話す事は何一つねぇよ」

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story101(プロフ) - はい!ぼんさんの作品、正座待機でお待ちしております。 (2016年12月25日 22時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - story101さん» こんばんわ!お久しぶりです^^*更新停滞申し訳ございません(><)ふぉお!そう言って頂けると喜びの舞を披露しちゃいますよ!!←怖い有難うございます!これからもよろしくお願いします(。_。*) (2016年12月25日 22時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
story101(プロフ) - こんばんはまっくろワッサンです。私エンマ大王。特、にぼんさんの作品のエンマ大王の大ファンです。面白いのひと言に尽きるというか (2016年12月25日 21時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - ぼんさん» いえいえ、それほどでも(照)(((はい!もちろんです!応援してます!! (2016年10月29日 0時) (レス) id: a285e02c29 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» こんばんわ!おおっ!流石こたつさん^^*仕事が早いでウィス・:*+.(( °ω° ))/.:+読み返して下さってありがとうございますー!これからも頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2016年10月28日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぼん | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年6月5日 4時

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