【ノルソル過去編】善良な悪人達の話 ページ16
ノルカはそう語った老人に、奥歯を噛んだ。
そんなの、知らなかった。なんて事は言いたくなかったのだ。
ゆっくりと後方を振り返えれば、テントの入口の隙間から遠くに見える球体。
今まで自分達がいた別世界だ。
「……俺達が今まで見てきた世界は……煌びやかで平和で、穏やかな世界は!!何一つ本当の事なんてない。嘘っぱちの世界だったんだ。そうだろ?なぁ、親父…」
ボソリ。とノルカが呟いた言葉に、ソルカは悲しげに目を伏せるばかりだった。
「しかし、儂らとて黙っている訳では無い。」
ハッキリと言い切った老人の声に、2人はハッとして老人に視線を移す。
そこには弱々しい老人……だが、その赤い瞳にしっかり真を宿した決意の表情の彼がこちらを見ていた。
「儂はもう長くはない。いずれにせよ、近いうちに死ぬであろう。……しかし、この子らは違う。」
老人がそう言って視線を向けたのは、傍らにいたあの子供だった。
「この子らは老耄とは違う。未来がある。こんな劣悪な環境で、腐りきった土地で死んで良い存在では無い。だからこそ、生まれ育ったこの星を……故郷を捨てる覚悟をしたのだ」
「故郷を、捨てる?」
「さよう。儂に出来る事は新たな土地を求め、この子らの未来を保証してやる事だ。」
「……でも、新たな土地って」
「ヌシらは、地球。という惑星を知っておるか?」
ノルカとソルカの耳に落ちた、地球という単語。
それは、一度座学で聞いたことのあるものだった。
緑豊かな青い星。そこには生命が溢れ、様々な生き物が共存している。と…。
そしてその星には、自分達と同じ妖魔も存在して居る。という事も教えてもらったことだった。近年、中流階級以上の者を対象に、短期移住権を配布しているのも知っていたが、まだ幼い二人にとってはあまり関係ないものであり、地球についての情報はそれくらいしか知り得ていない。
「地球、って。僕達とは違う妖魔が住むと言われている星ですか」
「そうだ。……地球はここより遥かに生命というものを維持する環境が整っている。と言われておるのじゃよ。それ故に、輪廻の輪も大きく形成されており、妖魔の数も比べ物にならぬくらい大勢居ると聞いている。何より、地球の妖魔の王は友好的で民を大切にしておるのだ。全て風の噂だが、儂はその噂に賭けたいと思っておる」
老人は目元を綻ばせ、傍らの子供の頭を優しく撫でてやった。
【ノルソル過去編】善良な悪人達の話→←【ノルソル過去編】善良な悪人達の話
63人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
story101(プロフ) - はい!ぼんさんの作品、正座待機でお待ちしております。 (2016年12月25日 22時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - story101さん» こんばんわ!お久しぶりです^^*更新停滞申し訳ございません(><)ふぉお!そう言って頂けると喜びの舞を披露しちゃいますよ!!←怖い有難うございます!これからもよろしくお願いします(。_。*) (2016年12月25日 22時) (レス) id: c56038631b (このIDを非表示/違反報告)
story101(プロフ) - こんばんはまっくろワッサンです。私エンマ大王。特、にぼんさんの作品のエンマ大王の大ファンです。面白いのひと言に尽きるというか (2016年12月25日 21時) (レス) id: 8b873bc734 (このIDを非表示/違反報告)
こたつ(プロフ) - ぼんさん» いえいえ、それほどでも(照)(((はい!もちろんです!応援してます!! (2016年10月29日 0時) (レス) id: a285e02c29 (このIDを非表示/違反報告)
ぼん(プロフ) - こたつさん» こんばんわ!おおっ!流石こたつさん^^*仕事が早いでウィス・:*+.(( °ω° ))/.:+読み返して下さってありがとうございますー!これからも頑張りますのでよろしくお願いしますm(_ _)m (2016年10月28日 1時) (レス) id: 5b2ccc4cc0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ