僕の好き、君にあげる。

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涼介「あれ先輩、風邪っすか？」




『あーううん、ただのにやけ防止』




涼介「ニヤケボウシ…？」




頭の上にハテナが浮かんでいる山田くんを他所に私は朝の出来事を思い出す。



八乙女さんのこと思い出してニヤケちゃうのを隠すためのマスクとか、口が裂けても言えないわ…。



八乙女さんは私に会ってドキドキしてくれたって、そういうことでいいのかな。それは都合がよすぎるか。



あーもう私の口下手天邪鬼奥手でもうすぐ三十路ババアーー！……自分で言っておいて結構悲しいけどこれが現実か。



ちゃんと恋愛経験を積んだ可愛い女の子だったら『ドキドキしてる』とでも言えたのだろう



まあそんなことを言えていたら今頃夫の1人や2人、子供の1人や2人くらいは居るか。



って…………やば、慧のせいで軽々しい女の思考回路になってきてる。






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とにかく、八乙女さんは最強ということが今朝よく分かった。思い知らされた。




八乙女さんに話しかけられる直前まで私を取り巻いていたあの記憶も、八乙女さんと一緒に居た時は一瞬も考えていなかった。



……もしかしたら八乙女さんなら、この呪縛を解いてくれるかもしれない。





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いやそんなわけないか、人任せにして問題を解決しようとするなんて、そんな無責任な話はないか。



でも。ただちょっとだけ、八乙女さんには甘えたい、少しだけでいいから優しくされたい。




「なんでもない」なんて言わないで欲しい。






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