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8.抵抗 ページ8

「ねえ、私車買おうと思うんだけど」


夕食の際、誠司に思いきって言った。


「え、どこに置くん?」

「…………そのことなんだけどさ」


私は手元の不動産の広告を取り出し、誠司の前に広げた。


「私、一人暮らし始めたいの」


そういった瞬間、箸を握る誠司の手が止まった。


「……どうして急に?」

「この物件の立地の方が私の職場に向いてるし、一人暮らしはちゃんと経験しておいた方がいいと思って」


誠司は黙って箸を動かし始める。


「自分の車も欲しいしさ……どう?」

「車なんて俺の乗ったらええ」


まあ、やっぱりそうなるよね

実際車なんて、遠出する時にしか乗らないし、他の誰かに乗せてもらうから不自由はしたことない。


「俺はあんま家におらんし、実質一人暮らしみたいなもんやろ?」

「そうだけど……」

「この生活に不満があるなら話は別やけど」


そういわれると、返す言葉がない。

はなっから誠司が素直に認めてくれるなんて思ってはいなかったけど。


「まあでも、今すぐにってわけじゃないから考えといてほしいな」

そう一言でまるめて、私は食事を終えた。




健大くんと会って以来、私の心は確実に誠司から離れてた。


一人暮らしも本当に必要だと思うし、車が欲しいのだって事実だ。



でも今私の頭にあるのは、

誠司と別れて、慎吾くんとも関係を切って、健大くんに忠実に恋をすること。


自己中で我儘な自分は、本当に嫌気がさす。

でも、ずっと3人を欺き続ける方が、よっぽど駄目だと思った。



そんなことを考えながら食器を片付けていると、ふと背中に温もりを感じた。

両肩に誠司の腕がまわされている。


「片付けてるから」

そう言っても、離れる様子はなく、返事もない。



暫くの沈黙の後、誠司が口を開いた。







「俺は別れないよ」







ポツリとそう言って、私の背中から離れた。

私は何もすることが出来ず、ただ、手元の皿をそっと下ろした。








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砂田琴莉☆野球&BIGBANG(プロフ) - とても面白いです。頑張ってください(^ー^) (2017年12月25日 8時) (レス) id: 7d83a7a8fd (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ(プロフ) - 楽しみにしてます!!! (2017年12月11日 20時) (レス) id: 45b184216f (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ちくわさん» ありがとうございます!!これからどんどん登場する予定ですよ! (2017年12月11日 13時) (レス) id: ce7d14e8eb (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ(プロフ) - 石田くん出てるのすごい嬉しいです!!!!!!! (2017年12月11日 12時) (レス) id: 45b184216f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年12月5日 0時

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