熊本地震

第１夜_4 お食事中の方すいません。嘔吐表現があります。 ページ4

隣の家の二人を机の下に入れてから僕はちらりとテレビを見た。変わらない。同じものしか流れない。熊本でも混乱が起きてるのも事実か。と少し落胆する。

父は隣人にアドバイスをした後部屋で片付けを始めた。そして、父は笑いながら私に言った。


「さあ、片付けるよ。」

と。僕は少しムッとして、

「笑って言うことじゃないと思うけど？」

と返すと、それでも父は笑って、


「笑うほかできんだろ？いつまでも、暗い顔はしたらダメだからな。」


みたいなことを言ったのを今でも覚えてる。一言一句完全に覚えてないのが今になって腹立たしい。だが、その言葉を納得して自分が笑ったのも事実だった。

部屋にあるプラスチックの洋服入れを元の位置に戻しながら、僕はニコニコ笑ってた。元々作り笑いは大のお得意だったし、そうでもしなきゃ、父の言う通りなんか壊れそうだったのもある。

「神桜さーん。」

と呼ばれ、僕と父は玄関先に行く。


「はい。どうしました？」

と父が返事すると嗚呼と納得した。無論僕も納得だ。ご主人が帰られたのだ。ライムで話ができたからこそのご主人の無事の生還だった。

小学生と幼児の二人は少し眠たそうだった。だが、二人をご両親に託した後、お兄ちゃんの方が嘔吐した。夕飯はおそらく食べたはずだろうが、そこまで生々しくなく、唾液の混じった胃液の感じのようだったのを見て僕はおそらくストレス性の物だと判断した。


と言ったって、自分は医者ではないし、何かできるわけでもないので取り敢えずトイレットペーパーを渡して拭いて、と言ったくらいしか出来なかった。

その後その家族はすぐに避難する予定らしく家に鍵をかけて降りていった。


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その後ようやく母と連絡がついたと父に言われ、自分たちは避難することなくすぐに迎えに行った。


余談だが自分はその当時携帯を持っていなかったのでライムが電話より使えることなどは全く知らなかったのだが、こういう時は充電がある限りとても役に立つ且つ安心できる。と学んだ。


母は地震発生時、仕事場にいたそうだ。仕事場は古い五階建ての建物で地震が起きると壁の至る所にヒビが入ったそうで、降りるのが危なかったらしい。



母の仕事は英会話スクールのスタッフだ。かなり長く勤めていた為上の役職の人である。そのため連絡で忙しそうにしていたのを今でもおぼえている。

母と落ち合う筈のコンビニは割れたワインの香りでクラクラした。

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