佰捌. 天秤にかけるもの ページ29
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【敦 視点】
たしかに、街を救うためには必要だったかもしれない。
…でも、鏡花ちゃんが、あんな目に遭う理由なんてないのに。
ハ「急ぎなさい、こっちだ」
パラシュートをつけたハーマンさんが、僕を急かす。
芥川に掴まれているおかげで首は苦しいが、そんなこと気にしていられない。
…鏡花ちゃんが、無人機で白鯨にぶつかるなんて。
想像するだけで、胸が苦しくなる。
芥「…あの人は如何した」
敦「え…?」
不意に、芥川が呟く。
引きずられながら、パラシュートで降下する寸前。
…あの人、というのはまさか。
ハ「…Aくんのことかね」
敦「っ、そうだ、Aさんは…?!」
彼は、目を伏せる。
ハ「…彼はまだ、この中に」
敦「っ、どうして!?」
ハ「勿論止めた。…だが彼は、一度言い出すと聞かない人間だ」
芥「…今から行けば、まだ助かるか」
ハ「危険だ、早く脱出した方がいい」
ハーマンさんは僕達二人の背中を押す。
横浜の街か、鏡花ちゃんとAさんか。
そんなの、天秤にかけられる筈がないのに。
…なのに、これしか手はないのか。
芥「…Aさん、ッ」
…そういえば、芥川は何故Aさんと知り合いなんだろう。
それも気になるが、本当に今はそれどころじゃない。
敦「っ、鏡花ちゃん、Aさん!!!」
涙が止まらない。
未熟な自分が、恨めしい。
パラシュートで降下しながら僕は、海に沈んでゆく白鯨をただぼんやりと見つめていた。
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Rain(プロフ) - 突然すいません!この作品が、とても面白くて好きです!続編楽しみにしてます! (2016年12月27日 22時) (レス) id: 5eaacd6e9b (このIDを非表示/違反報告)
シェエラ(プロフ) - いつも楽しく読まさせていただいています。続編楽しみにしています。 (2016年12月27日 19時) (レス) id: e4ad18c1a6 (このIDを非表示/違反報告)
yukka_setuna_syota(プロフ) - 続編楽しみです!!!これからも頑張ってください!! (2016年12月27日 15時) (レス) id: 7eb3008315 (このIDを非表示/違反報告)
Chikaのほい(((プロフ) - おぉぉ!続きが凄く楽しみです!更新頑張ってください! (2016年12月27日 14時) (レス) id: f4f8a58d61 (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥(プロフ) - 第二期、終わってしまいましたね…私も第二期のOP、ED共にお気に入りだったので、最終回の入れ方に鳥肌がたちました!深夜にTVの前で発狂してましたw第三期フラグが完全に立ちまくってたので、原作のストックがたまるのを今か今かと待ってます…更新頑張ってください! (2016年12月23日 0時) (レス) id: 1eec9432d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2016年12月3日 15時