檸檬と夜叉−6 ページ21
ドンッと少女の渾身の力で体を押され、反対側の扉へ飛ばされたAと中島。
『やっぱり、君は自分の異能力が強すぎるが故に・・・自分で制御できない。そうですな?』
「私は三十五人殺した」
「もう一人だって殺したくない!!」
泣き叫ぶような、漸く見れた境花の年頃らしい姿。しかしそのエンディングが、爆破に巻き込まれて死ぬわけには行かないのだ。
境花は、自分の願いを叶えるために、自己犠牲を持って人を助けようとした。
覚えているだろうか?
Aは、自己犠牲で全て片付けようとする奴が一番苦手なのだ。だって、目の前で、自分を守るために人が死んだら、誰も良い気にはなれないだろう?そうだからだ。
足を獣化させて走り出そうとする中島を右腕で制し、盗んできた梶井のナイフを片手に持って境花を追いかけて電車を飛び降りるA。
ナイフで服と爆弾の接合部を素早く切り、ナイフと同時に爆弾を天高く投げた。
「Aさん!!!」
「A!!?何してんだい!」
衝撃を抑えるために、境花の小さな体をぎゅっと抱きしめ、自分の背中を地に向ける。
車掌室と六号車からその一部を見ていた二人に向けてAはグーサインを見せる。
彼女も、人を助けてもそれが自己犠牲で人が助かるという事を嫌う。目の前で人が自分を守って死んで行く気持ちはどうだろう。冷たくて、何も考えられなくなるほど真っ白になる。
『(自己犠牲は嫌いだ。
社会的には喜ばれ、尊ばれるその行為も、守られた側の人間にとっちゃ最悪の行為ですわ。
守られた側は、守れて嬉しくとも、守られた側は、一生その重い死顔を見て生きてかなきゃいけない。大っ嫌いだ。
どちらかが死に、どちらかがハッピーエンドでは意味が無い。どちらもハッピーエンドにならなくては、舞台の悪役はたまった物じゃない)』
ドボォン!!と音を立てて、二人は海に落下した。爆弾は、激しい光と音を発して空中で燃え尽きた。
五号車から聞こえる、親子連れの子供の叫び声。与謝野に絡んだ男の叫び声。
それは全車両に響くくらい大きな声だったのに、与謝野と中島の耳には何故か入らなかった。
その時、ポンッと空に煙玉のような物が打ち上がる。その真下には、境花に支えられて踏ん張っているボロボロのAの姿があった。
「Aさん!!!」
「A!!!」
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響輝@ロングスリーパー(プロフ) - か、完結…!?!?更新お願いしたいです!!!あ、勿論無理ない程度で。。。外の作品も素敵です!頑張ってください! (2022年1月14日 21時) (レス) @page44 id: d6b5ec7764 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`) - 安心してください。。私もイデア氏にしか見えないです。(白目) (2021年12月27日 15時) (レス) @page36 id: 46b862f725 (このIDを非表示/違反報告)
怜 - 夢主ちゃんがイデアくんだとしか思えない私は末期() (2021年11月23日 13時) (レス) @page14 id: a2bd06fd1d (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - 楽しみに待ってるので頑張ってください! (2021年10月25日 21時) (レス) @page44 id: 577366e2a2 (このIDを非表示/違反報告)
蓮蜜 - この作品は本当に面白いです!これからも頑張って下さい! (2021年10月23日 11時) (レス) id: a6fc2eacdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kaoru | 作成日時:2021年9月22日 23時