八話 ページ9
黒岩は長い通路を歩いていく。
『……あ、ねぇ君。』
歩いている途中の扉の前で見張っている黒服に声を掛けた。
「はい、如何なさいましたか」
『其処、通してくれない?私、一寸地下牢に行きたいのだけど……』
黒服は頷き扉を開ける。
黒岩は扉を潜り地下牢の中へ入っていく。
そこには足枷と手枷を嵌められた太宰治がいた。
太宰「ッ……やぁ、先日ぶりだね…A」
黒岩は太宰の目の前まで行く。
『そうだね……気分はどうだい?』
太宰「最悪だよ、頭が割れそうだ」
黒岩はニッコリと微笑み、太宰の頬に触れた。
『そうだろうねぇ……あ、もう少しで中也くんが会いに来るだろうから相手してやって』
黒岩は太宰の頰から手を離す。
そしてそのまま地下牢を出ていこうとする。
『あ、そうだ治くん』
が、牢屋から出ようとした足を止めて、
くるりと振り返り太宰に話しかけた。
太宰「何だい」
『治くんは何か勘違いしてるみたいだけど……』
黒岩は少し悲しげな表情を浮かべ、太宰を見つめる。
『……僕は、別に治くんを恨んでいないよ』
それだけ云い残し、そのまま地下牢を出ていった。
67人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時:2023年11月6日 20時