揺らぎ ページ18
「あっ!おい!!」
降谷の制止も聞かずAは走り出す。
枯れたはずの涙がまた溢れそうだったから…
自分からじゃ絶対に飲まないコーヒーを買って一気に飲む。
香ばしい苦さが口に広がり、少し頭が冴えてきた…
『さっ!仕事仕事!!やるぞー!!』
Aは自分の頬を叩いて歩き出した。
仕事が終わった時にはもう夜遅く……皆はもう帰っていて、やっと終わった仕事に背伸びをしながらため息を吐いた。
『あー!疲れた!……今日は晩御飯作る気力無いし…どっかラーメンでも食べて帰ろうかなぁ…』
「ホォー?それはバランス悪そうだな?」
ガタッ!!
『ふ、降谷さん!!!?』
ドアから突然聞こえてきた声に驚き慌てたおかげでイスが倒れた。
『お、お疲れ様です!どうしたんですか!?こんな時間まで…何か仕事が残っているんですか?』
腕を組み、ドアに凭れてこちらを見つめてくる降谷に心拍数が上がる。
「いや…小桜が気になってな…」
『え?』
「様子がおかしかっただろ?」
あぁ…そう言うことか…降谷さんは本当に優しいなぁ…だからこそ今はその優しさが辛い…
ふとポケットにある催眠スイッチを思い出す。
Aは直ぐにポケットに手を入れてスイッチを押した。
ーーピッ!ーー
「…」
するといつも通り降谷は虚ろな目をして黙る。
Aは荷物をまとめ、何時でも出れるようにした後降谷に近付いた。
『降谷さん……私分からないんです……』
催眠状態の時は何も覚えていない……だから……
『降谷さん、頭撫でてください…』
そう言うと降谷は優しくポンポンと頭を撫でてくれた。
『降谷さん、抱き締めてください…』
すると今度は優しくAを抱き締めてくれた。
『降谷さん…私が「キスして」と言ったら、きっと今の降谷さんはしてくれるでしょうね…でも、私が欲しいキスはそんなんじゃない…そんなんじゃないんです降谷さんっ…!!!』
また泣きそうになる気持ちを耐え、グッと降谷から離れた後もう一度スイッチを押した。
「っ!?」
『心配してくださってありがとうございます降谷さん!でも大丈夫です!お疲れ様です!!』
ペコッと一礼し、まとめて置いといた荷物を掴んでそのまま走り出す。
「小桜っ!!!」
降谷が彼女の腕を掴もうと伸ばした手は、ギリギリ届かずそのまま遠くなる。
『お疲れ様でーーす!!』
精一杯の笑顔を作り、ブンブンと手を降ってAはそのまま警視庁を立ち去った…
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ぽむ(プロフ) - すき。語彙力ないんですけど、この作品が好きです。ありがとうございました。 (2022年5月12日 23時) (レス) @page40 id: 10c6d472ea (このIDを非表示/違反報告)
九実(プロフ) - Shamrockさん» お褒めの言葉ありがとうございます!!皆様の応援のお陰でやってこれました!!これからもよろしくお願いしますm(_ _)m (2019年4月6日 6時) (レス) id: 8f700df676 (このIDを非表示/違反報告)
九実(プロフ) - おったまげさん» ありがとうございます!色々伏線がありましたねw1度読んだ後、もう一度読んだ時に伏線を見れるのが面白いように書きましたw! (2019年4月6日 6時) (レス) id: 8f700df676 (このIDを非表示/違反報告)
Shamrock(プロフ) - 九実さんの作品ほんと好きです。文才だなぁと思いながらいつも見ています。これからも頑張ってください (2019年4月5日 23時) (レス) id: 4a04417653 (このIDを非表示/違反報告)
おったまげ(プロフ) - もう本当に読んでいて素晴らしかったです。催眠のスイッチの部分とか、最後の最後にあぁこういうことだったんだ!って一人で感動してました(笑)これからも連載頑張ってください^ ^ (2019年4月5日 23時) (レス) id: e18c4166e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九実 | 作成日時:2019年4月5日 11時