守りたいもの

デート5 ページ17

『そ、そうですね！！そうですよね！！ここで恋人らしくしていれば諦めますよねっ！！』


わざと空元気を出してニッコリと笑う。

作戦とはいえファーストキスを…ううん…それじゃなきゃ降谷さんとキスなんて出来ないもの…ラッキーと思っておこうか…

痛む心に言い聞かせるように思う…本当は凄く…悲しかったのに…

観覧車を降り、Aは透に一言告げ御手洗へと向かう。パタンと個室に入った瞬間……


『〜っふ……うぅ……』


ポタポタと涙が零れ落ちた……

何故涙が出るんだろう……キスされた時は驚いたし恥ずかしかったけど…嫌では無かったのに…

止めようと思っても止まらない涙に更に声を押し殺す。


あぁ……そうか……偽りだから悲しいのか……涙が出るのか……
降谷さんにとっては何でもなくても……私には違ったんだ……


そこで改めて思った…彼が好きだという事、けれど彼は自分のことなど何とも思っていないということ…


『行かなきゃっ…降谷さんが…っ！』


必死で涙を止め、個室を出る。手を洗っている時、少し化粧が崩れていたので慌てて直した。


『よし…スマイルスマイル…！』


そう決心してAは御手洗を出る。


『お待たせしました透さん。』

「いえ、大丈夫ですよ。ディナーを予約してありますから行きましょうか。」

『はいっ！』


Aはニッコリ微笑み、透の手を取って歩き出した…


遊園地から移動してご飯を食べに行く。
その間も「透さん」は色々と話してくれて、自分もニコニコと相槌する。
予約していたのは気取らないイタリアンレストランで、二人で仲良く食べた後車で送ってもらった…


「それではまた…」

『はい！ありがとうございます…』

「Aさん？」

『あ、いえ…次はいつ行けるかなーと…思って…』

「また空いてる日を合わせましょう。」

『はい…それではおやすみなさい。』


そう言って車を降り、自分の部屋へ向かう。
帰宅した瞬間、ドアに凭れたままズルズルと座り込み、気が済むまで泣き明かした……



次の日は仕事……泣き腫らした顔を何とかメイクで隠し、仕事へ向かう。
気が重いまま廊下を歩いていると……


「小桜」

『っ！……降谷さん…おはようございます。』


今も頭の中で考えていた人が目の前にいた……


「小桜？大丈夫か？」

しまった！降谷さんは部下の小さな変化にも気づいちゃう人だった！

『大丈夫です！昨夜ちょっと寝付けなくて…ちょっとコーヒー買って目を覚ましてきますね！』

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