268.愛のない行為。 ページ29
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「A、早いものでここでの生活も一カ月が経とうとしています。どうです?私と一緒に趙へと来たくなりましたか?」
「私はいずれ秦国に帰ります」
「強情ですね。これから起きる戦を止めようと、確か此所にきたはずなのに。何も変わっていませんよ、私の心は。此度の戦で秦国を滅ぼすと言った私の言葉に偽りはありません。そして、その為の準備も着々と進み、数日後には歴史を動かすような大戦が始まる」
「李牧さんは一体何をしようと、」
「それを聞き出したいなら、私の口を割らせればいい。貴女の持つ魅了の力を使えば、私は此度の作戦を貴女に話してしまうかもしれません。その情報を持ち帰り、秦国を救おうとしているようですが……。私の口は容易く情報を教えて上げるほど、優しくないですよ」
挑発的な眼差しで私を見る李牧さん。私が李牧さんの元へと来るように差し向けた言葉。人払いをした天幕内も外も、これから起きる事を予想して李牧さんがそうした。
何時も私の傍らで護衛してくれる慶舎さんの顔に、陰りが見えたのは私がこれからしようとしている行動に気づいたからだと思う。予め身につけていたモノは布一枚だけ。その格好で夜更けに李牧さんの天幕へと向かったのだから。
李牧さんは嘘をついてはいない。
これから起きる事は、秦国にとって国を脅かす程の戦になるということ。
日々増えてくる軍勢。ここ暫く李牧さんの姿が見えなかったのは、各国を訪問していたから。今回は何処の国に出向いたとか、かき集められる兵士達に予備の武器や馬。
考えれば考える程、よくない方へと思考は傾く。
「新しく王を迎えての秦国内は、まだ統率が十分ではないと聞きます。王弟反乱の際に鎮めたと思われる残党も、密かに王の命を狙っていると。若き王を受け入れられない者も多いでしょう。そこに外から敵の攻撃を受ければ、どうなる――」
秦国の未来を暗く描く李牧さんの言葉を黙らせる為に、自分の口で塞いだ。強く唇を押し付け、一言も発しないように。
私の背中に回された手に、私も同じように李牧さんの背へと手を回す。
行為に痛みがあると知らなかった。
愛されて、愛して、互いの体を重ねるものだと思っていた。
父上の時も、政の時も、幸せな気持ちになれたのに……。
今はただ……苦しいだけ。
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S - 初コメ失礼します!キングダムにハマって昨日この小説を一から読んだんですがほんとに号泣で最高です!これからもがんばってください (3月31日 13時) (レス) @page50 id: 458c8fefa1 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 綿菓子さん» コメントありがとうございます。確かに、自分でも早いと思ってます笑。引き続き読んでいただけたら、嬉しいです。ありがとうございますね。 (2020年6月12日 19時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
綿菓子 - 最近は更新スピードがとても速いので嬉しいです!唯一無二の花嫁。7も必ず読みます♪無理せず更新頑張ってください(^^) (2020年6月11日 19時) (レス) id: 80159fc2f2 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 海さん» ありがとうございます。私も、読者様がこの作品を読んでくれることと、コメントをもらえることが原動力になってます。更新頑張ります! (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ゆうあさん» はい、宜しくお願いします!こちらこそ読んでいただき、ありがとうございます。頑張りますね! (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年12月30日 16時