337.絆。 ページ1
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全てが綱渡りだった。
兵も気力も、肉体はすでに限界を超え、次第に口数は減っていき、明日を生き延びられるのか、それすらも不透明だった。動けるものは、女子供も駆り出された。援軍は期待できず、そうしなければいけない状況だった。
ここが「蕞」が陥ちてしまえば、全てが終わりだ。
沢山の兵を見送った。
沢山の兵の屍の上に、私達は生かされている。
「信…。」
「A、近づくと危ねぇぞ!信のやつ、意識飛ばしてもまだ戦おうとしてるからな!」
尾平さんの言葉に、私はもう一度信の名前を呼ぶと頬に触れた。
全身傷だらけ、傷の手当てもままならないうちにまた戦いにでなければいけない。満足のいく治療も出来ず、傷口は炎症し肌を変色させていた。
「……Aか…。」
「信、意識が…!よかった…無事で…っ」
「あたりめェよ…こんなとこで死ねっかよ……お前をおいて…死ねねェ……」
伸びてきた信の手をぎゅっと握り返し、「ありがとう」と返せば、信は笑いかけてくれた。壁にもたれていた体がズルズルと横に倒れてきて、私の膝の上に信は頭を乗せる。
「なっ、テメェ信!!なにどさくさに紛れてAちゃんの膝の上をゲットしてんだ!!」
「うっせェ!ねーみんだよめちゃくちゃ!」
「だったら地面で寝ろ!!」
飛信隊の隊員の声に、信は言葉を返す。
元気があるみたいで…よかった…。
「ならば、俺もここで体を休めよう」
「大王様!?こ、ここでっ…!?」
「おー政か…」
「信、まだ元気はありそうだな」
「まぁ…お互いボロボロだけど」
なんて言い返しながら、二人の口元は笑っていて、隊員達は信達を見ては開いた口が塞がらない状態。国の大王である政に対し、信の態度は普通なら無礼極まりない態度。失礼など、もしくは言葉を述べるのも身分の低い者にとっては、夢のまた夢。
普通なら。
でも、信と政の絆は普通では語る事は出来ない。
「こんな時ぐらいAを貸してくれても…いいのによ…、」
「冗談はよせ。如何なる場合でも、Aは俺のモノだ」
「はっ、束縛の強い男…」
「束縛する女がいないお前には、言われたくないな」
変わらない言い合い。
二人がいてくれれば、変わらない日常はまたやって来る。
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ゆずぽんず(プロフ) - 続き、楽しみにしてます。 (2月25日 22時) (レス) @page50 id: 25d2c56152 (このIDを非表示/違反報告)
ナタデココ(プロフ) - 本当に続き楽しみにしてます( *´꒳`* ) (11月30日 7時) (レス) id: bb115dbd7a (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - こんにちは、コメント失礼致します。シリーズ全て読ませて頂いています!相変わらずお話が面白くて感激しました…!続編楽しみにしています!! (2023年4月23日 23時) (レス) @page50 id: 3d6874678d (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 9、楽しみにしています (2022年12月6日 16時) (レス) @page50 id: 9084a50d79 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Ayuさん» 初めまして。コメントのお返事遅くなり申し訳ありません。私もキングダムに出会えて、この作品を作るまでになりました。更新頑張りますね!お時間ある時にでもまた遊びに来て頂ければ幸いです。コメントありがとうございますね。 (2022年10月5日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2021年1月10日 13時