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取引 ページ2

「これは…珍しい来客だ。」

「…貴方、誰。」

必要最低限の物しか置いていない空間で
モノクロ姿の人物が呟いた。

「フフ、自己紹介は不要(・・)だろう?」

「それも、そうね。」

既に彼を知る私に、
彼の自己紹介は必要無い。
尋ねる必要すら、元々無かった。

そこに座って、と促され
白いソファーに着席する。

「…で、貴方は私を知っているの?」
「いいや。知らないね。」

差し出されたカップの水面で
私の顔がゆらりと揺らぐ。

「…私はA。
早速なのだけど─…
この状況を説明してくれない?」

ねぇ?博士?と問えば
彼…Gaster博士は笑った。

「君自身、何となく
理解できているんじゃないのかい?」

「…まぁ、何となくね。」

おおよそ、トリップと呼ばれる
時空間移動だろう。
…逆に、そうでもなければ
この現象に説明のつきようはない。

「…不思議。科学で
説明しようがない事が起きるなんて。」

「科学で証明できない事こそ
不思議な物になるんだよ。」

それから彼は飲みかけのカップを置き
再度、口を開いた。

「─随分落ち着いているね。」
「…そう?内心、慌ててるよ。」

同じようにテーブルにカップを置き
彼の黒い瞳を見つめる。
…読めない表情にため息を溢した。

「…今の君は、肉体を持たない存在だ。
魂だけ、とも言えるね。」

「…にしちゃ、おかしくない?
何で肉体がないのに身体はあるのさ?」

自分の肌に手を滑らせた。
触れる事で脈打っているのが分かる。
…作り物ではないみたい。

「それは身体()に過ぎない。
魂を守るだけのただの入れ物。
いくら人間でも空気中に
Soulを残存し続けたらどうなるか…
…そのくらい、分かるだろう?」

時間経過で空気中に四散することくらい
容易く想像できた。

「…一時期な仮物ってことね。」

「理解が早くて助かるよ。」

自分自身に何が起きたのかは
理解することができた。

…問題は、これから。

ぼんやりと手元のカップに
注がれた液体を見る。
液体が黒いせいなのか、
映りこむ瞳が酷く虚ろにみえた。

「…取引をしないかい?」

高めの声に意識は引き戻される。

「異なる世界の君には
暮らす場所がないだろう?
僕がその場所を提供しよう。
その代わりに僕の手伝いをしてもらう。
…それでどうだい?」

「…構わないよ。私に権利は無い。」

了承したのは博士にも伝わった。
博士は立ち上がり
恭しく、大袈裟に、お辞儀をした。


「地下世界へようこそ。歓迎しよう。」

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零ノ花(プロフ) - コハクさん» 犬の呼吸音はトラウマだったな。怖かったわーあれ。 (2019年4月29日 16時) (レス) id: fd8ff30996 (このIDを非表示/違反報告)
コハク(プロフ) - Amalgamの話しはいつ聞いてもグロイと思う。犬はよくあんなの思い付いたよなぁ(失礼) (2019年4月29日 15時) (レス) id: 8996be223c (このIDを非表示/違反報告)
零ノ花(プロフ) - コハクさん» 会話割って失礼(_ _)。坂○忍さんに似てるよね。 (2019年4月29日 2時) (レス) id: fd8ff30996 (このIDを非表示/違反報告)
コハク(プロフ) - カマ猫さん» バカパン?あぁ、顔芸がヤバイ奴。(そうとしか認識してない矛盾の塊) (2019年4月28日 23時) (レス) id: 8996be223c (このIDを非表示/違反報告)
カマ猫 - コハクさん» 個人的にバカパンに色々と相談したい。いい答えくれそう。 (2019年4月27日 14時) (レス) id: 6d716ce25d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:零ノ花 | 作成日時:2019年3月14日 15時

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