ただずっといちゃいちゃしてるだけ【黒子のバスケ】

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どこで選択肢を間違えたのだろうか、このお姫様は。

フリッフリの美しいドレスの恰好で、人形なんかでは比にならないほどに麗しすぎる、おとぎ話のお姫様になるために生まれてきたようなこの女は、
なぜか薄汚いぼろ布一枚の村人Aを好きになってしまった。

キラキラとした大きな瞳が影の薄すぎる俺を映し、写真を撮って売ればうん十万円しそうなほどの可愛らしい笑顔を間違えた相手に向けるA。


＿＿＿＿お前の運命の相手はどう考えても、乗馬が趣味の、後ろに立ってる赤髪チート王子だろうよ。


あきれ顔でそう思うも、彼女は彼を七人の小人の赤い帽子をかぶった一人、くらいに思っているようだ。赤司には目もむけずに、こちらにひっついてきては愛をぶつけてくる。……完全にミスキャストだ。



「黛先輩、今日も恰好よかったです！！大好きです！」


「……言う方、間違えてんぞ」


「えっっ！……ち、ち、千尋先輩……とお呼びしていいんですかっ！？」



ぱぁっと綺麗な顔を赤く染め、嬉しそうに目元をほころばせる彼女。
周りの連中が羨まし気にこちらを見ているが、こっちとしては的外れな解答に心底困ったものだった。
言い方の問題ではなくて、俺じゃなく赤司にいえよって話だったのだが。


都合のいいようにとらえた彼女に、何を言っても無駄。


どこでそんなスキルを覚えてきたのか、生まれつきなのか、運命の相手を定めた彼女はあまりにも一途すぎて本当の運命の相手の存在に気づかない。


毎日ありったけの愛を俺に注ぎ、俺と話せば嬉しそうに頬を染め、一途に純粋に好きだと告げる。


いくら俺が赤司を推し進めようと、興味のないアピールをしようと、彼女はひとっつもあきらめなかった。頑固だ。頑固すぎるし一途すぎるし強情で我儘で諦めを知らない肉食系。誰だこいつをお姫様とか言ったやつ。


昔暇つぶしの一環で、読んだことのある少女漫画にもこういうヤツいた。

平々凡々なヒロインが、赤司みたいななんでもできちゃう系王子様と付き合うのに「私、この人と釣り合わないかな……」とか「きっと王子様にはお金持ちの美女が似合うよね……」とかもじもじ乙女ポーズをしながら悩むという物語。

あれを読んだ時は死んだ魚の目でそれを読んだ後、感想は「ハーン……」くらいしかでなかったが、
今では全力で彼女に同意したい。


たぶんあの少女漫画のヒーローも、Aも、どこかで選択肢を間違えてしまったのだ。

3→←お姫様は選択肢を間違えてしまった。【黛千尋】

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