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「…………こない、か」


静かすぎる夜空にぽつりと吐き出した言葉はそれだけだった。それ以外に何も言えない。
辺りの静かすぎる空気は、俺に何も答えてくれはしなかった。

ただ、左腕にはまる腕時計の針は、タイムリミットを告げていた。



____やっぱり、今日は帰ってこないか。



仕方がない。むしろわかっていたことだ。彼女が今日忙しいということは。諦めるしかない。

何時間も座り続けていたからか、固まってしまった体を少しずつほぐし、ゆっくりと立ち上がる。

ボストンバッグと紙袋を持ち直し、また腕時計を確認した。時刻は12時を過ぎている。終電まで走ればぎりぎり間に合うかどうかというところだ。



____あと、10秒だけ、10秒だけまとう。

____いや、あと2分は全力疾走で行けば行けるかもしれない。



足は地面に縫いたように離れない。もう少しだけ。もう少しだけと自分の首を絞めるように、タイムリミットを伸ばして言っていた。

黄瀬が超全速力で走れば間に合うような時間になって、ようやく、俺の心はハッと我に返った。さすがにもう、行かなくてはと本能が訴えていた。



「…………。」



沼に沈んでいたように重くなっていた足が、ようやく沼から出ようとする。力を入れて、足を持ち上げた、その時。


風も吹いていなく、木のこすれる音すら聞こえなかった空気が、ゆらりと揺れた。


自然ばかりの辺りに、小さな機械のエンジン音。車の音だ、とすぐに理解した。


エンジンの音はこちらに近づき、そして。一度ぴたりと止まる。バタンという音。その直後にまたエンジン音が響き、闇の中に消えていった。


エンジン音が消えると、次はカツ、カツ、という軽いヒールの音が聞えてきた。俺の方に歩み寄ってくるその音は、いつも聞く音よりもゆっくりで。それはいかにその足音の人物が疲労しきっているのかを示している。


カツン


カツン


カツ……ン


階段を上がるような音は、最後には手すりに体重を預けているのかと思うほどに重くも軽い音だった。



階段の方を見つめる。足は動かない。動かせない。
ただ、視線だけそちらを見つめる。



すると、視界の端に入ってきたその姿は、ブラウンの長い髪だった。

前よりも細くなった体、栄養も睡眠も不足して真っ白になっている頬。眠そうに薄く開かれた瞼。



足を重そうに引きずり、壁に手を伝っていくその姿は________鞘師A。




俺の一番合いたかった、愛しい彼女だった。

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鎖月零(プロフ) - Flower*さん» flower!ありがとうございます!!短編の夢主は同じ夢主で書くのが普通だということを今の今まで知らなくて……全員バラバラにしてしまいました(笑)私も短編の方が書きやすくて軽くかけるので楽しかったです!続編頑張ります! (2018年2月26日 18時) (レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower*(プロフ) - 1完結(?)おめでとうございます!甘々で読んでてドキドキしてしまいました(*ノωノ) それぞれのお話の夢主ちゃんたちも個性豊かで面白し、何より短編なので読みやすいです。やっぱり零すごい……。続編の方も首を長くして待ってます! (2018年2月24日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» めっちゃ楽しみにしてます!!! (2018年2月18日 18時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - 黛パフェさん» うそぉ……本当に恥ずかしいです(笑)規制かかる系の甘々はあまり得意分野ではないのですが、楽しんでいただけると幸いです……!甘くなるように頑張ります (2018年2月18日 18時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» 今でもたまに見たりしますよ!黄瀬くんの好きですー!規制とかあまり気にしないタイプなので別のアカウントで見に行きますねー! (2018年2月18日 1時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鎖月零 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年12月17日 17時

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