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その手紙は完全に私が言いたかったことを全て綴ったものだ。物語形式になんてはしていないし、
第三者視点でかいたり比喩表現を入れたりなどは一切していない。
ただの本音。私がずっと黒子さんに言いたかったこと。
それらが詰まったたった二枚の紙っぺら。いつもはパソコンのきちんとした字で提出して添削してもらうものが、今日は私の丸っこい肉筆だ。こっちのほうが感情がストレートに伝わるかなと思ったから。
そんな手紙を、上から下に読んでいく黒子さんの水色の瞳は、いつになく綺麗だった。
いつだってその瞳は水面のように綺麗だけれど、今のこの綺麗さは水面なんかでは表せない。小説家なのに、言葉がでてこない。
でも、それくらいにきらきらと輝いていて。その中に愛情がぎゅっと込められなような、温かさがあったのだ。
瞳は水で濡れているのに冷たさを感じない温かい瞳は、最後の一文字を読み終えた後、ふと閉じられた。
水色の便せんを大事に離さないように持ちながら、黒子さんは一度目元をぬぐう。
そして、再び目を開けると、私に向き合った。
ドク、と跳ね上がる私の心臓。この手紙を見て黒子さんはどう思った?うざい女だって思った?それとも、僕もですと言ってくれる?
緊張と期待に満ちた目で彼を見つめると、黒子さんは淡く笑った後にようやく言葉を紡ぎだした。
「…………やっぱり、いつ読んでもAさんは文才がないです」
「……………。…………………。…………………え?」
まさかの皮肉!?文章への駄目だし!?内容無視!?
ごーんごーんと頭の中で鐘が鳴っているような気がする。こんなに恥を忍んで書いて、結果まさかの文章に駄目だしだなんて……。書く前にしっかり起承転結を守って書くべきだった、と後悔の念が押し寄せる。
それよりも前に恥ずかしすぎて穴があったら埋まりたいくらいなんだけど。穴がなくても帰りたいくらいなんだけど。あ、此処自宅か。
そんな思考がぐるんぐるん回る中、私はなんとか泣き出すまいと目に力を込めて笑った。
「……はは、そーですよねー……。いつも黒子さんから戻ってくる原稿真っ赤っかなダメダメ作家で……はは、あはははは……………はぁ。」
「そうですね、君の小説の添削は結構苦労します。擬人法ばっかりで、同じ表現が多くて。」
「く、くろこさん……私のメンタルそんなにずったずたにしたいんですか……」
私の弱り切った声に、黒子さんは静かに首を横に振った
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鎖月零(プロフ) - Flower*さん» flower!ありがとうございます!!短編の夢主は同じ夢主で書くのが普通だということを今の今まで知らなくて……全員バラバラにしてしまいました(笑)私も短編の方が書きやすくて軽くかけるので楽しかったです!続編頑張ります! (2018年2月26日 18時) (レス) id: e5c976073b (このIDを非表示/違反報告)
Flower*(プロフ) - 1完結(?)おめでとうございます!甘々で読んでてドキドキしてしまいました(*ノωノ) それぞれのお話の夢主ちゃんたちも個性豊かで面白し、何より短編なので読みやすいです。やっぱり零すごい……。続編の方も首を長くして待ってます! (2018年2月24日 0時) (レス) id: 4d95f4e8a2 (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» めっちゃ楽しみにしてます!!! (2018年2月18日 18時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
鎖月零(プロフ) - 黛パフェさん» うそぉ……本当に恥ずかしいです(笑)規制かかる系の甘々はあまり得意分野ではないのですが、楽しんでいただけると幸いです……!甘くなるように頑張ります (2018年2月18日 18時) (レス) id: a33d034fdf (このIDを非表示/違反報告)
黛パフェ(プロフ) - 鎖月零さん» 今でもたまに見たりしますよ!黄瀬くんの好きですー!規制とかあまり気にしないタイプなので別のアカウントで見に行きますねー! (2018年2月18日 1時) (レス) id: d3f83fb575 (このIDを非表示/違反報告)
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