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「俺の親父はエンデヴァー、知ってるだろ」
「う、うん、その」
「万年No.2のヒーローだ。お前がNo.1ヒーローの何かを持ってるなら俺は尚更勝たなきゃいけねぇ」
少し声が大きくなった気がした。爆豪はAも黙っているとわかったのかゆっくりと拘束を解いていた。
「親父は極めて上昇志向の強い奴だ。破竹の勢いで名を馳せていったが、それ故、生ける伝説オールマイトが目障りだったらしい。自分ではオールマイトを越えられない親父は次の策に出た」
「何の話…轟くん」
「『個性婚』知ってるよな」
「！？」
出久が息を飲むのと同じ様に爆豪も息を飲んだ音がAに聞こえた。これから話される事にAは顔を伏せた。
「自身の個性をより強化して継がせる為だけに配偶者を選び…結婚を強いる。実績と金だけはある男だ。親父は母の親族を丸め込み母の個性を手に入れた」
「え」
「俺をオールマイト以上のヒーローに育て上げることで自身の欲求を満たそうってことだ。うっとうしい、そんな屑の道具にはならねぇ」
小さな頃の小さい記憶。家の近くで見た儚い女の人の影がちらつく。あの人も白い綺麗な髪をした、優しそうな女の人だった。泣いていた女の人に白い小さな花をあげた記憶がある。今になって記憶が戻ってくるなんて、とAはぐっと拳を強く握った。
「記憶の中の母はいつも泣いている『お前の左側が醜い』と母は俺に煮え湯を浴びせた」
「っ！！」
「俺がお前につっかかんのは見返すためだクソ親父の個性なんざ使わずに一番になることで奴を完全否定する」
Aはそう言い切った焦凍に思わず涙がでてしまった。静かに鼻をすすりごしごしと溢れる涙をぬぐっているとため息をついて焦凍がAの方に向かってきていた。あわてて爆豪は近くの影に隠れたがAはそのまま何もできなかった。
「…なんで、お前が泣いてるんだよ」
「ごめ…」
「…緑谷。お前が言いたくねぇなら言わなくていい。お前がなんであろうと俺は右だけでお前の上を行く。」
出久はAがいたことにも焦凍の過去にも驚いていたが、未だに泣いているAの手を引いて歩きだした焦凍に向かって声をだした。
「僕は、誰かに救けられてここにいる。オールマイト。彼のようになりたい。その為には一番にならなきゃ。君に比べたら些細な動機かもしれない、だけど僕だって負けらんない」
「さっき受けた宣戦布告。改めて僕からも…僕も君に、君たちに勝つ！
続→
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作者名：唯星 | 作成日時：2017年12月20日 21時
