24 ページ24
・
「…、私のは分かるけど…伊之助の感情までは、分からないよ」
Aの言葉に納得がいかないような表情を見せた伊之助は、「なんでだ?Aと同じなんじゃねぇのか?」と顔をしかめる。
「…違うかもしれないじゃん」
私は伊之助が好きなんだよ、と出かけた言葉を飲みこんで、Aはぐっと唇を噛みしめる。
「お、おい、血が出てるぞ」
そう言って唇を押し広げるように口内に入ってきた伊之助の指に、自分は伊之助の些細な行動ひとつでこんなにも胸が苦しいのに、と悲しくなって、Aはほとんど八つ当たりであることを理解しながらも伊之助の指に思いきり歯を立てる。
「!な、なんだ!?なんで噛むんだ!?」
驚いたように目を白黒させた伊之助は、「分かった!じゃれてるんだな!?」と明るい笑みを浮かべて、Aの首筋に噛み付いたかと思うと、がぶがぶと甘噛みを繰り返す。
「へっ、」
背筋を駆け巡る初めての感覚にAが身体を震わせると、ぎゅっとAを抱き寄せた伊之助が、すりすりとAの頬に己のものをすり寄せる。
「…、んん?」
何か疑問に思うことがあったのか、すり寄るのを止めてAから身体を離した伊之助は、Aの顔をのぞき込んで、「今、何考えてる?」と瞬きをひとつする。
「な、なにって…、」
火を吹きそうなほど真っ赤になった顔を隠すように俯いたAは、「とても、恥ずかしい…」とか細く声を震わせる。
「…っ、…A!さっきAが言ってた、心臓がドクドクってやつがする!それに、身体が熱い!」
伊之助の言葉に自分も同じ状態であることも忘れてAが顔を上げると、顔を真っ赤にした伊之助と目が合って、Aは一瞬、自分に都合の良いことを期待してしまう。
「…その顔!その顔は何なんだ?それを見てると、なんかぐわーってなって、我慢ならねえ!」
「か、顔?我慢できないほど不細工ってこと?」
「…うああっ!…駄目だ!そこら辺走ってくる!!」
「え、まっ…」
Aの制止をふりきって走って行ってしまった伊之助に、Aはだんだんと身体中の熱が冷めていくのを感じながら、ただ一人、呆然と瞬きを繰り返した。
309人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チーズ(プロフ) - 唄子さん» コメントありがとうございます!そしてお返事遅くなり申し訳ありませんm(_ _)m嬉しいお言葉をありがとうございます!! (2023年4月10日 3時) (レス) id: 3890fde5bc (このIDを非表示/違反報告)
唄子 - 胸がキュンキュンです (2022年8月10日 21時) (レス) @page37 id: 585502c22b (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - ナギサさん» コメントありがとうございます!伊之助の良さが表現できていたようで嬉しいです!ご期待に添えるように頑張りますので、よろしくお願いします(^^) (2020年12月9日 15時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
ナギサ(プロフ) - 伊之助のこの男らしさと可愛さが混ざった表現を…ごちそうさまです。続き楽しみに待ってます (2020年12月9日 6時) (レス) id: 4d18708d8c (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - しがれっとさん» 嬉しすぎるお言葉ありがとうございます〜!!お兄様いいですよね!歳の離れた妹を溺愛しつつ、厳しいところは厳しい、しっかりしたお兄様でございます(^ω^) (2020年12月7日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:チーズ | 作成日時:2020年11月24日 18時