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Aの努力の甲斐もあってか、以前より柔らかい表情をAに向けるようになった杏寿郎は、逢引のつもりはないのだろうが外での食事にAを頻繁に誘い、側から見れば仲睦まじい夫婦にしか見えなくなっていた。
「相変わらず凄い食欲ですね」
「そう言うAが、少なすぎるのだ!」
そう言って自身のおかずをAの皿に乗せた杏寿郎は、「さぁ、もっと食べろ!」と笑みを見せる。
「…分かってますか、杏寿郎さん。私最近、こうして杏寿郎さんがおかずを分けてくださるお陰で、どんどん太ってしまって…」
「元々が華奢すぎただけだ!肉付きが良い方が抱き心地も良くて、俺は好きだぞ!」
きっとやましい意味はないと分かっているのにAにはそう言う意味にしか聞こえなくて、恥ずかしすぎて顔を俯かせたAは、先ほど杏寿郎に乗せられたおかずを口の中に放り込む。
「美味いだろう!」
「…はい」
うなづくAに再びおかずを分け与えた杏寿郎に、抗議の意味を込めてAが杏寿郎に視線を送ると、優しく微笑み返されてしまって、Aは早くなる鼓動を誤魔化すように慌てて杏寿郎から視線を逸らす。
「ついているぞ」
「え、」
ぐいっと指先で口元を拭われ、その指先を口の中に入れられて、Aは驚きのあまり口を閉じようとして杏寿郎の指を思いきり噛んでしまう。
「ははっ、そうか美味いか!どんどん食べろ!」
「ち、んぐっ、」
違う、と言おうとしたAの口に新たなおかずを突っ込んだ杏寿郎は、「これも美味いぞ!」とまだ噛んでいる途中のAの口に、どんどんおかずを入れていく。
「んんー!」
もう入らない、と首を横に振ったAに、「なんだ、もういいのか?」と首を傾けた杏寿郎は、慌ててうなづくAに「相変わらず可愛いな」とよく分からない感性を発揮して、自分の食事を再開させる。
「やはり、食事は誰かと共にとる方が美味い!」
「…そうですね」
笑顔で相槌をうつAの表情の中に、わずかに寂しさのようなものが感じ取れたのを見て、杏寿郎は何か思案するような表情をみせる。
「…杏寿郎さん?」
「語弊があったようだ!」
「え?」
「Aと共に食べる食事が、一番美味い!」
繊細な気遣いとは無縁そうに見えるのに、こうしていつもAの望む言葉をくれる杏寿郎が、Aはたまらなく愛しくて、ほんの少しだけ、切なくも感じた。
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チーズ(プロフ) - みゆさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!期待に添えるように頑張りますので、よろしくお願いしますm(__)m (2020年11月5日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - よもぉぎさん» コメントありがとうございます!無限列車に乗車したんですね!私まだなんですー!煉獄さん現実に来て欲しいですよね、、更新頑張りますのでよろしくお願いします! (2020年11月5日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - 読ませていただきました!!煉獄さんがイケメン過ぎるし千寿郎は可愛くて お話が更新されるのを楽しみにしてます(*´ω`*)更新大変だと思いますが、無理せず頑張ってください☆ (2020年11月4日 8時) (レス) id: 010b0b49eb (このIDを非表示/違反報告)
よもぉぎ(プロフ) - はわぁ...素敵すぎます〜!!煉獄さんから愛されるなんて話数を積む事ににやけが増していきます!!無限列車にも乗車したんですがどれほど煉獄さんが現実にいたらと思ったんだろう。。更新頑張ってくださいー!!! (2020年11月4日 7時) (レス) id: 990295e7ae (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - パプピーマン。さん» コメントありがとうございます!好きすぎるだなんて嬉しいです!口角が富士山!言い回しが上手すぎて思わずクスッと笑ってしまいました、、!!関係ないですけど、今の季節の富士山はめちゃくちゃ綺麗ですよね〜(笑)更新頑張りますのでよろしくお願いします! (2020年10月30日 11時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2020年10月8日 14時