0038:魔王―狂想― ページ40
【ギャロ】
虎杖ら3名は本来ならば屋外にあっても違和感の無い道もしくは廊下を、伏黒の術式"十種影法術"で顕現した式神の「玉犬」を先頭に歩いて行く。
その進む道は彼らの背中を前へ、奥へと強引に背中押すかのように背後でパッと別の道へ切り替わった。
迷路の様に入り組んでいく屋内は繁華街から少し離れた、人目につかない路地裏にすら見える。
アングラ臭漂う、打ちっぱなしのコンクリート壁、剥き出しの配線や配管。
ここの排水路でネズミが走り、マンホールからゴキブリでも上がってしまえば、完璧に外を歩いていると錯覚しかねない。
「惨い…」
「3人…で、いいんだよな」
そんな倒錯的な景色を眺めつつ、導かれながら進む彼らが開けた場所に出たかと思えば、目の前には人の遺体がコロリと転がっていた。
口を覆う釘崎と現状を確認する伏黒の声は、誰の返事も聞かないまま鼠色の壁に溶けていく。
一方、虎杖は既に全てを止めた亡骸の傍に駆け寄り、物申さない彼らの中で形を留めた人の刑務服に手を掛ける。
ゴソゴソと漁れば、胸元に縫い付けた長方形の布が虎杖の目につく。
"岡崎 正"
油性ペンか何かで記した3文字。
目を薄く開いたまま、鼻と口から血の筋をつけた顔。
それら状況を脳内で理解すると先程の女性が脳裏を過ぎった。
「この遺体、持って帰る」
虎杖は、はっきりとした声色で言う。
それに動揺する釘崎を他所に、虎杖を制止する伏黒と、自分を貫く虎杖。
「『置いてけ』っつったんだ。ただでさえ助ける気のない人間を、死体になってまで救う気は無い」
伏黒の言い分は、虎杖の見つけた人間は救う価値のない人間であると言う。
「オマエは大勢の人間を助け、正しい死に導く事に拘ってるな」
そして、裏付けるのは少年院から開示された資料であり、二度の前科と一度の人殺しの罪を償えるのなら、命と引き換えは妥当だと。
「自分が助けた人間が将来人を殺したらどうする」
「じゃあなんで俺は助けたんだよ!!」
互いに胸倉を掴みつつ譲らず意見の押し付け合い、睨み合いを見兼ねた釘崎が両名を諌めようとするその時。
「いい加減にしろ!!時と場所をわきま___」
彼女の体はカクンと傾き、足元に出来た粘度の高そうな黒い何かにトプンと沈んで姿は既に無い。
「釘…崎?」
束の間の出来事に放心する虎杖を置いて、すぐさま状況確認する伏黒の視界には、壁から頭部だけを覗かせた自分の式神の無惨な姿。
「虎杖!!逃げるぞ釘崎を探すのはそれからだ!!」
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ゆきみ大福(プロフ) - ボブさん» コメントも評価もありがとうございます。文章力が足りなくてすみません(´;ω;`)分からない所を教えて下されば!解説作ります! (2021年7月30日 22時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)
ボブ - お話少し難しいけど、読んでいて楽しいです!毎日更新楽しみにしながら過ごしています!星の一番右端押しました!! (2021年7月28日 14時) (レス) id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみ大福(プロフ) - 絶対に出て来るなぁ。笑える。低評価あざーす (2021年4月28日 12時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきみ大福 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mutsuki159/
作成日時:2021年4月27日 23時