【tkrv】梵天と解体屋 (ページ3)

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竜胆と解体屋ページ3

━ 竜胆side

面倒臭い仕事がようやく一段落した夕方。
梵天事務所のビルが一段と騒がしくなる。

「Aさんお久しぶりです！」と浮ついた部下共の声が廊下から聞こえた。
Aは梵天の中では紅一点の様に下っ端から崇められている。

可愛い、綺麗だ、と見惚れてる部下がちらほらと廊下を覗けば居た。

それもそうか。女みたいな見た目だが中身は狂人なのを幹部以外は殆ど知らないからな。

梵天が囲っている解体屋のAは俺たち兄弟含めその他幹部の何人かは顔馴染みだ。

まぁここに引き込んだのは三途だが。

廊下に俺が顔を出したのを見つけたAが勢い良く抱き着いてくる。
ふんわり匂う香水はいつもと違って少し甘い。

「気づいた？」

「あ？あー…新しい香水買ったのか？」

「そー！正解！さすが！女用なんだけど男も使えるよーって貰ったんだ」

これが男物なのか女物なのかは俺には分からない。
兄ちゃんならすぐ分かりそうだが。

「蘭ちゃんは？」

「兄貴ならもー帰ったよ」

「えー、この香水のお礼しようと思ったのに」

いや、あげたの兄ちゃんかよ。
確かに兄ちゃんが好きな女にあげそうな香水の匂いだ、なんて考えた。

「そんな綺麗にしてどこ行くんだ？」

ふとAの全身を見れば普段とは違ってタイトなドレスにヒールといった服装をしている。

Aは男だがそんな事を気にもせずドレスやヒールを履いたりする。
本人曰く、自分の見た目が武器になる事がわかっているからだそうだ。

女でも男でもいける顔をしているからどんな服装でもAにかかれば似合ってしまう。

ただ、中身は梵天をそのまま擬態化したような奴だが。

「ココから借りたカードで竜ちゃんと遊びたくて」

「え、俺と？」

「え？？ダメ？ココからは竜ちゃんなら良いよって許可貰ったけど」

Aは小さいカバンからブラックカードを取り出してニコニコと笑った。

「オレ行きたいお店沢山あるから竜ちゃん着いてきてよ」

「あー…わかった。丁度仕事終わってたし。」

簡単に事務所を片付け、部下共には適当に終わらせて帰るよう伝え俺達は事務所を出る。
俺の腕に軽く巻き付く手は本当に女みたいに細く感じた。

この手で何人もの人間を解体し売買し殺しているなんて誰も思わないだろうな。
見すぎた俺に首を傾げながら「なに？」と目で訴えてくるA。

「お前になら解体されてぇかも」

小っ恥ずかしい言葉と共にAの笑い声がビルとビルの間に響いた。