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「……好きな漫画、とかは?」
どうやら、この空気の気まずさに耐えかねているのは私だけではなかった様で、遂に黄瀬くんからも話題が振られる。
ナイス! ありがとう黄瀬くん。そしてガワは中坊、中身は貴方より一回り上のお姉さんだというのにも関わらずこんな空気を生み出してしまって申し訳ない。ごめんね黄瀬くん。
そんな黄瀬くんからの助け舟に全力で応える様に、私はとりあえず間口が広い漫画を全力で思い浮かべて口に出す。
「ワンピースとかかな! 黄瀬くんは?」
「あー……俺アラバスタ編で止まってるッス……」
「そっかー……」
会話終了。ありがとうございました。ここから会話が盛り上がるビジョンが全く見えません。大変申し訳ございませんでした。
万策尽き、ついに訪れようとしている沈黙に覚悟を決めようとした時、クツクツと堪え切れないと言ったように黄瀬くんが笑い出す。
「俺ら、今んとこマジで共通点皆無ッスね」
とことん合わねー、と先ほどの気まずそうな表情とは打って変わって、耐える事が出来ずそのまま決壊してしまったかの様にケラケラと笑い出した。
……なんかよくわからんけどウケてる。黄瀬くんもこの本当に絶妙に噛み合わない会話にちょっと面白くなって来ちゃったりするんだ。
爽やかに笑いながら言う黄瀬くんに、こちらも徐々に自然と笑えて来て、「確かに」と返した。
「ねえ、黄瀬くんの好きな漫画は?」
「NANAとか読んでたッスけど……桐原サン読んでないでしょ?」
「うん、読んでない。でも黄瀬くんお姉ちゃんいるでしょ」
「え、当たり。なんでわかったんスか」
「NANA読んでる男の10割は姉持ちでしょ。常識ですよ」
「何スかそれ」
ちょーヘンケン、と朗らかに笑う黄瀬くんに、笑うと結構幼く見えるな〜とぼんやりと思っていると、先程まで今かと待ち侘びていた担任からの終了の合図がようやく教室に響いた。
そのほんの一瞬、黄瀬くんの顔に宿ったほんの少し名残惜しそうな色を見て、意外とサイン貰えるくらいには仲良くなれるかもしれないな、なんてなんとなく考えていた。
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時