45 ページ46
「いやダメでしょ。黄瀬くん彼女いるよね」
意識的に怪訝な顔を作ってそう言う。人混みの中とはいえ、流石に彼女持ちとこんな距離感で歩くのは個人的にあまりよろしくはない。
てか今私めちゃくちゃ「彼氏の側にいたら超嫌な女友達」のポジションにそのまま収まってるな、なんて思っていると、黄瀬くんは少し気まずそうに頬を掻き「あー……」と低めな声で言葉を紡いだ。
「別れたんスよ」
「え!? はっや!」
「なんか俺ソクバクされんのマジ苦手で……」
「短い春ってヤツッスよ」とわざとらしくため息を吐いた黄瀬くんを思わずぽかん、とした表情で見てしまう。
「この前の彼女出来た宣言本当マジで何だったの」
「いや、あれはなんか、ただ、その……Aちゃんどんな反応すんのかなー、的なやつじゃないッスか」
図らずも思っていた事がそのまま口をついて出てきてしまい、それを聞いた黄瀬くんが少しわたわたと弁明じみた事を言う。
「出来た報告の時よりよっぽどショックだよ、早すぎて」
何だかそんな様子の黄瀬くんがおかしくてたまらなくて、堪らず笑ってしまいつつ少し冗談めかしてそう言う。
少し不貞腐れた顔の彼が「ちょっとネタにすんのやめてもらっていいッスかね……」と恥ずかしそうに左手で首をさすった。
・
その後奇跡的に二席空いていた学食で昼食を食べた後、私達は本格的に学園祭の出し物を回って行った。
私は飲食店のブースで気になったものを片っ端から買って行った。
ベビーカステラを善意で一つ黄瀬くんに渡したら屈託のない笑顔で「太るんで俺はいいッス!」と言われて少しイラッとしつつ、悪意はないんだよな〜と思いながら自分で全て食べたのがハイライトだろうか。
あとはあれだけ拒んだのにおばけ屋敷にはちゃんと連れて行かれてしまった。
電気という文明の利器があるのに敢えて消すのが腹立たしい。物陰から驚かせる事を目的としているレジャーなんて存在意義がわからない。
頭ではそんな事を考えているが身体は恐怖で進まず、「いや歩けないッスから」と呆れた顔の黄瀬くんに引っ付きながら何とか出口に辿り着いた。
ゴール特典と言われてもらったキーホルダーがこれまた不気味で「もういや」と半泣きで言うと、「ごめんね」と黄瀬くんは申し訳なさそうに眉を下げながら、口元には楽しそうな笑みを浮かべていた。
63人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時