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中途半端に声を掛けてしまった上にこの言葉が聞こえてしまうと「貸そっか?」と声を掛けたくなってしまう。ついでに、あの紫原くんのあの少し子供じみた口調を聞くと、なぜかどうしても世話を焼きたくなってしまう。
 自分に備わっている「困ってる子供を放って置けない体質」の子供認定がガバガバ過ぎて、あんなデカい同級生すら子供だと判断してしまっているのに自分で驚いていた。

 だが、初対面の人間に「金貸すよ!」と言われるの、紫原くんの立場からしたらちょっと怖いんじゃないか。
 「え、いや、いい……。何……?」と怪訝そうな顔で言われる世界線を想像して1人震える。

 そんな脳内では悠久、現実では数秒にも満たない思考時間の末に私が出した答えは、「よし、聞こえなかったフリしよう!」であった。

 鉛の様に重く感じる足を無理矢理持ち上げ、中庭から去る為歩みを進めようと試みた。
 あれは子供じゃない。中学生だ。勘違いしないで。動いて、私の身体。

 そんな風に必死に念じている私の右肩が、不意に大きなモノに叩かれる。

「ね〜、ごめんだけど小銭貸してくんない?」

 あ、紫原くんサイドから言ってくるパターンもあるんだ。全然想定してなかった。
 側から見るとこの体格差でこの申し出はカツアゲの様に見えるのだろうか。そんな事をぼんやり考えながら、「いーよ」と少し上擦った声で応えた。



「ありがと〜。このジュースさ、この自販機でしか売ってないんだよね」
「あ、そうなんだ」

 トロピカルマンゴー&フレッシュトマト味とプリントされたジュースを美味しそうに飲む紫原くんに「美味しいの?それ」と何気なく聞くと、「まあなんかハマるとイケる感じ〜」と間延びした答えが返ってくる。

「近いうち返すね〜。えーっと、何年何組の誰だっけ、アンタ」
「1年2組の桐原です……」
「え〜、1年なんだ。年上だと思ってた」

 紫原くんは無邪気に「俺4組〜」なんて言いながら笑う。よっぽど年上に見える彼に言われると余計ダメージが大きいな、とさりげなく傷付きながら「いつでもいいから……」と掠れた声で返す。

「じゃあ思い出したら返すね〜。忘れてたら4組の紫原宛にサイソクしに来て〜」

 「いつでもいい」を本気で受けてる。まあ本当にいつでも良いからいいか。
 そんな事を考えていると、紫原くんはそのまま垂れ目気味の瞳を細めてへらりと笑うと、「じゃ〜ね」と大きな手をゆっくりと振って中庭を去って行った。

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設定タグ:黒子のバスケ , トリップ   
作品ジャンル:アニメ
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時

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