検索窓
今日:38 hit、昨日:53 hit、合計:14,008 hit

37 ページ38

前世の記憶を取り戻した際、鏡に映る自分の容姿を見て私はハイスペ彼氏獲得待ったなしと手を叩いて喜んだものである。
 だが実際、二度目の中学生活を通じて分かったことは、中学生を恋愛対象として見ることが出来ないということだった。
 何せいくら外見は年相応の中学生と言えど、中身は結構な大人。どんなに好意的に見ても歳の離れた弟にしか見えないな、と早々に校内恋愛を諦めてしまった。

 しかし、今目の前にいる高尾くんなどの漫画の登場人物だった彼らはまた別だ。2周目人生謳歌中の私でもギョッとするくらい大人びていて綺麗だと思う瞬間が山ほどある。
 だが彼らと関わる時には、また別の問題が発生する。

 それは、どうしても漫画のキャラクターだった彼らが自分にそういった感情を向けることを一切想像出来ないのだ。

 そもそも一緒にお茶をしたり、学校で会う度話をしたりする今の状況ですら、一読者であった私にとっては奇跡的なものに近い。
 ただでさえ友達になれたことそれ自体が奇跡的に思えるのに、恋愛という事柄において彼らと同じ土俵に立つことなど到底想像出来ない。
 
 言わば、私の立場は漫画的に見れば「生徒D」だ。生徒Dがネームドのキャラクターと恋に落ちる様子など想定出来るわけがない。

 周りの生徒は恋愛対象として見られず、漫画のキャラクター達はそもそもこちらを恋愛対象として見ているとは到底思えないし私も見れない。
 要は、今世の中学時代は私にとって恋愛暗黒期が決定している。

 まあ高校か大学上がったら岡田将生似のイケメンとっ捕まえるし、と胸中で思っていると、「へー」と高尾くんはのっぺりとした声を出した。

「じゃあ誘いやすいわ。今度ディズニー行こうよ」
「え?」
「夏休みの最初の方に部活オフの日あってさ。どーせならなんかちょっと遠出したくて」
「えーやったー。行く」

 ただ幸い私には前世死ぬ間際に積んだ莫大な徳がある為、この様なお誘いがたまにご褒美の様に降ってくる。
 多いであろう学校の友達ではなく何故私に白羽の矢が立ったのか、そもそも友達とはいえ異性だけど2人でディズニーとか抵抗ないのかなど派生する疑問は全て「前世の徳故」で解決する。
 たとえ恋愛暗黒期でもこの様なご褒美いっぱいある為、むしろ満足度が高いのである。

 「アクアトピア乗りたいからシーがいい」と言えば、やけに嬉しそうな高尾くんが「えー? 俺ビッグサンダー乗りてえ」とわざと頬袋を作る様に言った。

38→←36



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (37 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
63人がお気に入り
設定タグ:黒子のバスケ , トリップ   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。