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「へー、帝光って学祭6月なんだ」
「そー。雨降ったらやよね」
高尾くんと合流してからしばらく経った頃。とりあえずと入ったカフェの窓際の席からどんよりとした厚塗りの様な灰色の雲を眺め、「てか今日傘持ってないわ」と呟けば、正面から「夜まで降んないらしーよ」と返ってくる。
「Aちゃん学祭なんかすんの?」
「古本市の店番」
「渋いね」
「でしょ。超暇そうよね」
マンモス校だから出店多くて回る分には面白そうだけど、と付け加えると、高尾くんは「ふーん」と興味深そうな高いトーンで発した。
「いつ?」
「一般公開は来週の日曜。来る?」
「んあー、試合だ。残念」
高尾くんは唸る様にそう言うとアイスコーヒー片手に大袈裟に落ち込むフリをする。
何度も会っているわけではないが、高尾くんとはメールのやり取りを何度もしているからか、何となく気の置けない友人の位置に移り始めている。メールの件名を毎回律儀に変えて送ってくるところが、LINE世代の私からすると新鮮で面白い。
「バスケ部だったっけ」
知ってるくせに〜と自分で自分にツッコミを入れながら、敢えて確認する様にそう尋ねると高尾くんは今度はニカッと音が出そうなくらいの笑顔で言う。
「そ! マジで練習きちーよ」
「でも楽しいんでしょ?」
「まあな」
口では文句を言うが彼の表情はとても晴れやかで、それを見たまま思った事を言うと、高尾くんはそんな風に同意しながらテーブルに頬杖をつく。何だか以前見た時より、袖の余白が小さくなっている様に感じた。
「でも休日返上で部活だもんね。頭がなんか、部活部活バスケバスケ〜って感じになりそう」
「そんなこともないって。部活が休みの日とか今日みたいに普通に遊びに行くし」
「わ〜……バイタリティ」
部活がオフの日はひたすら家で寝ていた前世の学生時代を思いながら素直に感心すると、高尾くんは手を軽く横に振りながら「みんなそんな感じだって」と笑った。
「Aちゃん休みの日何してんの?」
「んー、友達と買い物とかご飯とかかな。普通だよそれこそ」
「へー。あれ、彼氏とかはいないんだっけ」
「あはは、いないいない!」
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時