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「……ショック」

 聞いた言葉をそのまま反芻して、もう一度頭の中でも呟く。

 ショック。

 ショック……って、ちょっとマイナスの意味にびっくりする事だよね。
 彼女が出来ることは素直に喜ばしい事だし、かと言って黄瀬くんのこの容姿で彼女が出来る事は別に驚くことでもないし。

 そう頭でぐるぐると考えていると、半歩前に歩いていた黄瀬くんがこちらに向き直り立ち止まってこう言った。

「もし、逆の立場だったら、多分俺はショック受けるから。Aちゃんにもショック受けて欲しいんスよ」

 またあの感情がよく読めない表情でそう言うと、黄瀬くんはくるりと踵を返して、「駅あっちッスよね」と指を差した。

「じゃあ、また明日ッス」
「う、うん。バイバイ、また明日」

 そう手を振ると、一度帰路を歩きかけた黄瀬くんは何か思い当たった様に立ち止まった。
 どうしたんだ、と思っていると、黄瀬くんはくるっとまた方向転換してこちらに戻って来た。

「どうしたの」
「聞き忘れてたことがあったッス」

 黄瀬くんはそう言いながら後頭部を照れ臭そうに掻くと、「順序間違えたッス」と呟いた。

「学祭。もう誰かと回る約束してる?」
「ううん、してないよ。午前中は図書委員のシフトあるけど」

 先日黒子くんと時間を合わせて出したシフトの時間を思い返しながら、そう返すと黄瀬くんは意を決した様にこう切り出した。

「じゃあ、午後俺と一緒に回らないッスか?」

 その言葉に私は思わず目をぱちくりと瞬かせる。

「彼女は?」
「いいんスよ。俺がAちゃんと回りたいんスから」
「刺されるよ」

 「双方の同意があるなら良いよ」と付け加えると、黄瀬くんは華やぐ様に嬉しそうな表情を浮かべた。

「じゃあ決まりッスね」

 そう軽快な声で言って今度こそ「バイバイ」と背を向け、足早に去って行く黄瀬くんの背中を見てしばらく考えあぐねる。

 何で、私にもし彼氏が出来たら黄瀬くんがショック受けるんだろう。
 ショック……。マイナスな意味でびっくりすること。ということは彼氏出来ても喜ばしくないし、私に彼氏が出来る事って結構驚かれるような事なのかな。

 そうして考えるうちに、やがて出た「え、私彼氏出来そうには見えないってこと?」という結論に私は今度こそショックを受けていた。

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設定タグ:黒子のバスケ , トリップ   
作品ジャンル:アニメ
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時

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