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「そうなんだ。おめでと〜」
なんで急に彼女出来た報告をこの脈絡で? と頭に疑問符を浮かべながら、とりあえず素直に祝福をする。逆にこの容姿で今まで彼女がいなかった事が不思議だ。
だが私の祝福の言葉が気に食わなかったのか、黄瀬くんは少しむすっとした声色で首を傾げた。
「なんか……欲しかった反応と違うッス」
「は〜?」
眉間に皺を寄せこちらも思わずむかっとした声でそう返してしまい、すぐに相手は中学生だと思い返し、自分の大人気なさに猛省する。
「ええ……じゃあ、お前〜! アタシより先に彼女なんざ作りおって! この! この!」
「いたっ、いった! 人変わってんじゃないッスか! それも違うッスよ!」
「えー。叩いてごめんね」
「変わり身……。良いッスよ」
今度は嫉妬に狂うフリをしてみたが、これも黄瀬くんのお眼鏡に叶う反応ではなかったらしい。わざわざ彼に近寄りペチペチ叩いた私の迫真の演技も、正解でないのならただの無意味な暴力である。大変申し訳ない。
しかし、流石に答えが不明瞭過ぎる。黄瀬くんが何を求めているのかわからず、私は思わずこう尋ねてしまっていた。
「じゃあ私に何て言って欲しいの?」
「……ド直球ッスね」
「わかんないんだもん」
そう言って歩き出すと、今度は黄瀬くんも立ち止まらず私の横に着いて歩いて来る。
「俺も正直何て言って欲しいかは、よくわかんないんスけど」
「え〜何それ」
半分呆れた気持ちでそう言うが、まあ彼は思春期。いくら黄瀬くんが自分の感情に聡い人間だからと言って、何か言語化出来ないモヤモヤも一つや二つ抱える時期ではあるだろう。
建前は同い年だが私の中身は彼よりもだいぶ大人なのだ。そんな若者の靄がかった心くらい汲んでやらねばなるまい。
胸中ではしたり顔でそんな事を考えていると、不意に「でも」という言葉を先に置いて語り始める。
「多分、俺はショック受けて欲しいんスよ。Aちゃんに」
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時