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黒子のバスケ。
前世の学生時代、友人から借りて読んだバスケ漫画のタイトルだ。一時期はそれなりにハマり、アニメも全て視聴したのを覚えている。
大人になり更には転生を重ねた今も尚、大まかな物語の流れや登場人物の名前などが頭に残っている印象深い漫画だった。
転生先の世界は選べない、という条件をそのまま鵜呑みにしていた死後から転生するまでの自分にゾッとする。
もしも自分が人が容赦なく死ぬタイプの漫画に転生していたら、もしかしたら記憶が戻る前にまた人生が幕を閉じていたかもしれない。
つくづく死ぬ直前の前世の自分の徳の高さに感謝しかない。
転生した先には巨人も鬼も呪霊も悪魔もいないのだ。理不尽に突然死ぬリスクが皆無に等しい。前世と違うのは異様にバスケットコートが多いことことくらいだ。基本的人権が尊重されているタイプの漫画最高! スポーツ漫画最高!
幸い前世よりも容姿もそこそこに恵まれ、記憶も戻り勉強も就活もイージーなこと間違いなし。まさしく強くてニューゲーム。
不満なのは、ワンピースの完結前に死んだ事と、観ようと思っていた堺○人のドラマを見る前に死んだ事くらいだ。
入学式での校長とはじめとする、お偉い方々の長話はこれから始まる平和で恵まれた新しい人生に想いを馳せていたら、あっという間に終わっていた。
・・
式が終わり整列で教室に向かいながら、私は悶々と考えていた。
今世の私の名前は桐原 A。
そしてこの列はクラス別にあ行から名前順に並べられている。つまり私の位置は1年2組の「き」の部分。
なら目の前に歩いているこの金髪のやけに身長が高い男子は、私の記憶が間違っていない限り、おそらく彼だろう。
えー同じクラスになったりするんだー。まあそっか。同じ学校なんだからそういうこともあるか。なんか有名人見た時の気分。すごーい。今世たのしー。
内心ウキウキの私とは違い、列に並ぶ周りの生徒の面持ちには緊張と不安が滲み出ている。廊下には足音だけが響き、口をきく者は誰もいなかった。
先頭に立つ担任教師がガラッと教室の戸を開いた。生徒は順番に壁に貼られた座席表を見て各々の席についていく。
私も座席表を見て自分の名前を確認し、そして驚いた。
「隣の席になるとかもあるんだ〜……」
自分の名前の隣に書かれた「黄瀬涼太」という文字を見ながら、私は誰にも聞こえない声でそう呟いた。
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時