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「ごめんね。私嬉しいと周り見えなくなるタイプなの」
「そうなんですね」
あくまで嬉しいスタンスではあるよ！ とアピールをしたが、当の黒子くんはあまりに興味がなさそうにそう相槌を打つと鞄から単行本を取り出した。
「今それ何読んでんの」
「謎のプリンスです」
「はっやー。この前秘密の部屋とかじゃなかった？」
「結構面白くて。一気に読んじゃいました」
部活もやってるのによくこんな分厚い本読む体力あるなぁ、と感心しつつ、会うたびにする質問を今日も彼に投げかける。
「バスケ部どう？ 楽しい？」
「ええ、楽しいです。練習は吐くほどハードですが」
「吐くほどかぁ……」
そういえばよく吐いてる描写あったな〜、と懐かしみながら遠くの方を見た。
数年後バスケを一時楽しいとは思えなくなってしまう彼が、今はまだ毎日の様にあるハードな練習を苦とは思わないほどにバスケという競技を楽しんでいるのだと実感すると、何とも言えない嬉しさを感じる。
「何でそんなに楽しそうなんですか？」
「気にしないで。私頑張ってる若人を見るのが好きなの」
「桐原さんも若人じゃないですか」
大きな水色の瞳を細めてそう言う黒子くん。表情は晴れやかで瞳にはきらりとした光を宿している。
私は今のこの黒子くんの無邪気なほどに爽やかにバスケを楽しんでいる顔が今後確実に曇ってしまう事を知っている。楽しいと思っていたバスケに向き合えなくなってしまうほど、苦しむ期間があることも知っている。
彼らの歴史に介入する気はないにしても、今後必ず訪れるであろう彼の苦しみに苛まれる日々が出来るだけ短くなればいいな、なんて今の彼を見ていると、自然とそう願ってしまっていた。
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (
レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです！！これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：牛タン | 作成日時：2024年2月27日 9時
