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待ち合わせに指定されたのは、帝光中学校の最寄りから電車で15分ほどの繁華街だった。
改札から出て時計を確認する。指定された時間より少し早く着いてしまった。
そのまま柱にもたれかかり、初めて降りる街を眺めながら、将来部屋借りるならこういうちょっとした駅ビルがあってチェーン店色々ある駅の近くがいいなとぼんやり考えていた。
「あ、すいませーん! 遅くなりましたー!」
しばらくすると聞こえた声の方に目を向けると、大きく手を振りながら人懐っこい笑みを浮かべこちらに近付く高尾くんの姿を捉えた。
「いえいえ、今来たところなので」
社交辞令を返しながら、先日とは違い制服に身を包む高尾くんの爪先から頭のてっぺんまで気付かれないように視線を滑らせた。制服はこれから背を伸びることを見越して少し大きめで注文したのか、袖口を少し長めに持て余している。
今は私とさほど変わらない背丈が、そのうち170後半にまでなることを思い返し、第二次性徴期の尊さに頭を抱えそうになる。
そんな事を考えていると、ふと高尾くんがじーっと私の方を見ているのに気が付く。少し驚いた様な面持ちで彼は口を開いた。
「中学生だったんすね」
「え?」
「それ。帝光の制服でしょ? てっきり高校生だと思ってました」
軽い口調でそう笑いながら放たれた高尾くんの言葉に私は愕然とする。信じたくない気持ちで自分の両頬に手を当て、思わず吃りながら言葉を紡いだ。
「そ、そんな老けて見えます……?」
「あ、いや! そういう事じゃなくて! なんかめっちゃ大人っぽく見えたから……あの時は化粧されてたからっすかね? 実際何年生なんすか?」
「い、一年です」
「え! 俺も俺も! 同い年じゃん!」
だいぶ年上に見られていた事に自分でも意外なほどにショックを受け、同時に同い年とわかった瞬間に不慣れな敬語が外れる彼の人懐こっさに舌を巻いた。
「じゃ〜、とりあえず行こっか! めっちゃ美味いケーキ屋あるから、そこご馳走させて」
にこやかにそう言いながら、駅ビルの方を指を差し高尾くんは先を歩く。中1とは思えないスマートさにぽかんとしつつも、彼の年相応な、少し広くなり始めている背中に着いて歩いた。
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時