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というのを私が思い出したのは、中学校の入学式の前日だった。

 両親共々海外赴任が決まり、近くに頼れる親戚が必要。なら祖父母が住む田舎より裕福な叔母一家が住む地域に近い都心に家を構えた方がいい。そんな大人の都合で慣れ親しんだ土地から泣く泣く引っ越してから、1週間が経過した頃。
 新しい環境にも慣れ始め、これから始まる新生活に不安ながらも期待に胸を躍らせベッドにダイブしたその瞬間だった。
 唐突に、本当に唐突に前世の記憶や死んだ瞬間、そして死んだ後ここに転生してくるまでのことを思い出した。

「……え?」

 むくりと起き上がり、とりあえず息を整える。整えたところで困惑気味の脳内は延々と思考を巡らせているし、自分の意志とは関係なく心臓は痛いほど脈を打っているが、その唐突に戻った記憶を自分の身体にゆっくりと馴染ませるように、必死に深呼吸をした。

・・

 要はここは漫画の世界の中って事か。
 そう頭が理解するまでには、忙しなく動いていた思考は止まり、脈打ちは落ち着き、息は意識せずとも整うようになっていた。

 なんか死後の謎空間にいた時は思わなかったけど私漫画選べなかったってことは、めちゃくちゃ人死ぬ漫画に転生する可能性もあったんだ〜。超危ないじゃん。今のところめちゃくちゃ平和そう。よかった〜! てかうそ〜! マジで転生したんだ〜! 私無神論だったのにやっぱ死後の世界とかあるんだ〜、すご〜軽率に神信じそ〜!

 何故か上がるテンションのままに、ベッドから勢いよく降り部屋の鏡へと向かった。
 今まで意識して見たことがなかった、今世の自分の容姿が映し出される。
 前世の顔より、目が大きく鼻筋が通っていてまあまあ可愛い。髪質も断然良く、前世の時は高校生から欠かさずやっていた縮毛矯正も今世はやらなくて済みそうだ。あれ高いし髪傷むからめっちゃ嫌だったんだよね。

 さらに上がるテンション。おまけに弾む足を伴って書類がバラバラと置いてある机へと向かう。片付けが苦手なのは前世も今世も変わらないようだ。
 これは確認の為。先程記憶が戻ってから何となく察してはいるが、今私がどの漫画の世界に転生したのか、その確信を得る為に明日から入る中学校のパンフレットを手に取る。

「ああ〜、やっぱそっか。いやなっつ〜……」

 じんわりと蘇る前世の記憶を噛み締めるようにそう漏らしながら、パンフレットに書かれた「帝光中学校」という文字を眺めていた。

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設定タグ:黒子のバスケ , トリップ   
作品ジャンル:アニメ
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時

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