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「あのッ! 小さい女の子来てないですか!? 小1くらいの、オレンジのパーカー着てる、」

 息も切れ切れにそう言う彼に私は目を見開いた。
 少女と同じ黒々とした髪。グレーカラーの虹彩は鋭く、動揺が色濃く出ているその整った顔に私は見覚えしかなかった。

 た、たたた、高尾和成だぁ〜〜〜〜〜〜〜。

 彼のことはよく知っている。今の時系列から約3年後に緑間真太郎が進学する高校の同じ一年生、そしてそこから彼の相棒となる男だ。
 コミュニケーション能力が高く、先輩はもちろんあの堅物で変人な緑間真太郎とも良好な信頼関係を築く事が出来ていたあのハイスペックなキャラクターが、今私の目の前に、額に汗をかき息を切らした状態で存在している。

 興奮と動揺で部屋の端の方であわあわしている私の目の前で、「にいちゃん迷子にならないでよ!」「ほんとごめんなー」なんて微笑ましい兄妹の会話が展開されている。そういえば妹いる設定あった気がするなー。

 少女が不意に私の方を指を差し、「あのお姉ちゃんがね、ここに来ればにいちゃん見つかるって教えてくれたの」とはにかみながら高尾くんへ告げる。すると高尾くんは、視線を私の方へ向けると眉を下げた様な笑顔でこちらへ近づいて来た。

「ほんとありがとうございます、助かりました!」

 かっこい〜。イケメン設定付いてなくても漫画の住人だからかめっちゃかっこい〜。
 内心感動しているのを悟られない様「いえいえ、そんな、よかったです」と何とか返す。
 幸い心中は察されなかった様で、高尾くんは朗らかな笑顔のままこう続けた。

「もし良ければ、なんかお礼させてくれないっすか?」

 もしかしなくてもご褒美展開が舞い降りてきている。自分の困っている子供をなんか放って置けない性質に感謝である。

 お言葉に甘えて〜、と語尾にハートをつけながら答えようとしたその時、突然ケータイの着信音が鳴り響く。

「あ、ごめん。なんかいろいろあって。すぐそっち行く。2階ね、おけおけ。じゃあね〜」

 ピッとスタッカートに響く電話終了の音を泣きたい気持ちで聞きながら、彼の方に顔を向ける。

「というわけですので、お気持ちだけ頂戴致します……」

 悲し〜。高尾くんと仲良くなりたかった〜、と内心で号泣しながら、軽く会釈をする。
 センターを出ようとするその瞬間、後ろから「じゃ、じゃあ!」と私を呼び止める声がした。

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設定タグ:黒子のバスケ , トリップ   
作品ジャンル:アニメ
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです!!これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:牛タン | 作成日時:2024年2月27日 9時

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